防風通聖散の副作用
防風通聖散による副作用は、どのように起きるのでしょうか。
一例として2015年の症例報告では、49歳の男性がダイエット目的で市販の防風通聖散を飲み始めたところ、1週間後に発熱と呼吸困難を感じるようになり、入院。医師は薬の副作用による肺障害(薬剤性肺障害)と診断しました。決め手となったのは、男性の過去の副作用歴です。男性はこの8カ月前に病院から体重減量の目的で防風通聖散を処方されており、その時も服用後1カ月で発熱・倦怠感が出たため、自己判断で服用をやめていたのです。
なぜ、彼は体に合わないとわかっている薬を再び飲んだのでしょうか?
論文では、男性が市販で購入した防風通聖散は製品名が「ナイシトール」というカタカナだったことから、それが過去に服用して副作用の出た漢方と同じ薬であることに気づかず、ウッカリ購入してしまった可能性が指摘されています。
市販薬の中でも使用者が多い防風通聖散の副作用報告が多くなるのは自然なことでもあり、他の漢方薬と比較して特別危険であるとは言えませんが、軽々に使用している人が多いことは否定できません。“ダイエット薬”というどこか軽い響きに導かれて、自己流で飲み続けることは健康を害することになりかねないでしょう。
本当に体重が減らせるのか
肝心要の話として、防風通聖散で体重が減るという科学的根拠はあるのでしょうか。
ネズミを使った実験では、便の量が増えたことや、便に脂肪が多く含まれるようになったことなどが報告されています。人への効果はというと、肥満者120名(BMI≧25)を対象に、防風通聖散を約2カ月飲んだ人たちと、飲んでいない人たちを比べたところ、飲んだ人たちの体重は0.8キログラム減り、飲んでいない人たちは0.1キログラム減ったという報告があります。食事や排便の量だけでもそれくらいは減りますので、これはかなり小さな差であるように思います。
もちろん、これは報告されている試験の一つにすぎず、実際に漢方薬のプロフェッショナルの手によって体重減少に成功した人はいます。ただし、それには高い専門知識を駆使しながら、安全かつ適切な薬を選びながら……という条件がつくでしょう。
選び方にはコツが必要、効果には個人差が大きい、そして副作用の報告が多い。そんな“扱いにくい”薬だからこそ、資格者に相談しながら使って欲しいのがダイエットの薬です。
2005年に薬剤師免許所得後、医療用医薬品情報に関わる業務等を経て、市販薬の店舗責任者や新規事業関連のマネージャーを務める。ブログ「ドラッグストアとジャーナリズム」やSNSを通じて一般消費者向けに情報を発信し、講演、寄稿、書籍監修等も行う。