ポイントは「毎日塗り続けること」
水虫治療で大切なのは、何と言っても「毎日塗り続けること」です。皮膚の入れ替わりは1カ月と言われており、水虫の場合は最低1~3カ月は塗り続ける必要があります。前述のとおり、市販の水虫薬の多くは菌を殺す成分以外にもかゆみを抑える成分などが配合されているため、使い始めればかゆみは治まるはずです。しかしここで塗るのを止めてしまうと、菌が根絶できず、いずれぶり返すことになります。
日本皮膚科学会の「皮膚真菌症診療ガイドライン(2019年)」では、継続期間は患部の角層の厚さによって異なり、指間型では2カ月以上、小水疱型では3カ月以上、角化型では6カ月以上が目安であるとしています。
現在は市販薬メーカーも、利用者が長く続けやすいように「まずは1カ月!」といったキャッチコピーを作って継続使用を呼びかけています。例えば「ブテナロックVαクリーム」という商品は以前は15g入りでしたが、2018年にリニューアルし、28日分となるよう18gに容量を変更しました。それによって、「まずは1本を使い切る」というわかりやすい目安ができたのです。
かゆいところだけでは不十分
また、塗る範囲はかゆい部分だけではなく、周辺を含めて全体に塗るのが理想的です。水虫薬にはクリームや液体、スプレーなど様々な種類があり、使いやすさには差があります。症状に合わせて選ぶとともに、自分が使い続けることができる商品を選ぶことが大切です。
店頭の専門家には、まず今の症状を伝えることはもちろんですが、市販薬で対応することになった場合は「続けやすい薬はどれですか?」と質問するのも良いでしょう。
なお、一般的には「爪の水虫」と呼ばれる爪白癬の場合は、市販薬では対応できず、病院の薬が必要になります。また、水虫は“ただかゆい”だけでは済まされない場合もあります。
私の知り合いの薬剤師は、薬局に水虫相談に来た患者さんに対して、その方の糖尿病歴が長いことを踏まえて、あえて患部を確認させてもらったところ、潰瘍状態を見てすぐに受診を勧めました。後日「あと少しのところで手遅れになり、患部を切断するところだった、薬剤師さんに感謝しなさいと医師から言われた」と、お礼にお芋をもらったそうです。専門家に相談することの大切さを実感できるエピソードです。
2005年に薬剤師免許所得後、医療用医薬品情報に関わる業務等を経て、市販薬の店舗責任者や新規事業関連のマネージャーを務める。ブログ「ドラッグストアとジャーナリズム」やSNSを通じて一般消費者向けに情報を発信し、講演、寄稿、書籍監修等も行う。