なぜ「診断の邪魔」になるのか

また、市販薬が医師の診断の邪魔をするという意見もあります。足に生じている症状の原因が水虫であるかどうかは、実は皮膚科医でさえなかなか判断がつかないとされています。そこで皮膚科では、水虫が疑われる患者さんが来たらまず、かゆい部分の皮膚を取って、顕微鏡で実際に菌がいるかを確かめます。そうして初めて、水虫だと自信を持って言えるのです。

ところが、市販薬を受診前に使ってしまうと菌が減るため、病院でいざ検査をしても「菌がいない!」という結果になってしまい、正確な診断がつきにくくなるのだそうです。市販の水虫薬を使ってから受診すると、患者自身も医師も手間がかかり、結果的に医療費も増えることになりかねないわけです。

しかも、患者自身が「これは水虫だ」と思って受診したにもかかわらず、検査によって水虫ではないことが判明したケースは珍しくありません。過去の調査報告では、水虫を主訴(主な症状)として受診したにもかかわらず水虫以外の皮膚炎などだった患者の割合は4割、同様の別の報告ではなんと7割という結果でした。

水虫ではないのに水虫だと自己判断して市販薬を使い、仕方なく皮膚科を受診した時には症状が悪化してしまっている。これが、皮膚科医から市販の水虫薬が恨まれる理由です。

足に生じている症状の診察
写真=iStock.com/AlexRaths
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「専用の薬」の選び方

とはいえ、過去に水虫だと診断されて、かなりの自信を持って今回も水虫であると自分でわかる場合もあるでしょう。症状も軽度であれば、市販の水虫薬で対応してもさほど問題はないと思います。あるいは、水虫の診断をすでに受けた後、再受診せずに薬を中断するよりは、市販薬で治療を続けた方が良いでしょう。

成分で選ぶ時に、必ず守らなくてはいけないのは、「水虫専用の薬を選ぶ」ということです。水虫は白癬菌(はくせんきん)というカビの一種であり、その殺菌には「抗真菌薬」と呼ばれる成分を用いなくてはいけません。日本では1990年代に病院用の薬として発売された【ブテナフィン】や【テルビナフィン】、【ラノコナゾール】などの新しい成分は、2000年代に入ってから市販薬としても発売され、効果も十分期待できます(これより古い他の成分が効かないという意味ではありません)。