「念のため欠席」を認める自治体が増えている

すでに二学期の対応では、新型コロナウイルスの感染を避けるための「念のため欠席」も認め、オンライン授業の実施をし、その場合には欠席扱いとはせず出席停止とする自治体も広がっています(寝屋川市、三島市、掛川市等)。

また福岡市教育委員会では、感染症不安等で登校できない児童生徒にはオンライン授業を提供し、出席扱いとしています(福岡市教育委員会「夏休み明けの市立学校の取組みについて」2021年8月24日)。

オンライン授業の先進自治体として知られる熊本市教育委員会においても、感染症不安を感じた欠席の場合で、オンライン授業等の学習サポートを受けた場合には出席とする方針が示されています(熊本市教育委員会「熊本市立学校(園)における第2学期の対応について」)。

小中学段階では児童生徒1人あたり1台のタブレット・PCは国の予算によりすでに配備完了しています。

感染不安や濃厚接触等で「学校を休んでもいい」、そして在宅で学んだり学校の先生や友達ともつながる環境は、もうどの自治体・学校にもあるのです。

eラーニングコースを受講する少年
写真=iStock.com/kohei_hara
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一斉休校強行論とパターナリズム

文科省方針や、自治体は、「学校は休んでもいい」という方針で、柔軟な取り組みが進んでいます。

それでも全国一斉休校を求める声が止まらないのはなぜだろう、私自身はこのことが理解できず、だからこそ、興味をもって観察しています。

保護者以外の大人たちが、子どもたちの一斉休校を強引に求める現象については、率直に言って危険だと考えています。

2020年一斉休校を強行した安倍晋三前総理と同じく、権力を持つ大人(とくに男性)が弱い存在(とくに子どもたち)に、リスクやデメリットを顧みず一方的に乱暴なアイデアを押し付ける典型的なパターナリズムの発想だからです。

権力を持つ女性も、パターナリズムを容赦なくふるってきます。学校連携観戦を強行した小池百合子都知事、橋本聖子組織委員会会長たちにもまったく同じ問題が見出せます。

一斉休校については、感染症対策としてのメリットと、親子へのデメリットを冷静に比較衡量し判断する思考は、パターナリズムからは出てきません。

保護者(とくに女性)の失業やそれに伴う、生活苦や子ども・若者の心身のストレスや性暴力被害、自殺率の増加、若年妊娠中絶など、女性や子ども・若者など弱い存在にのしかかるダメージについては、すでにいくつものエビデンスが示されています。

さて文科省の発表では小中高校生の自殺は2020年、499人、統計開始以来過去最悪になりました(文部科学省「コロナ禍における児童生徒の自殺に関する現状について」令和3年5月7日)。

また大阪府立大学の山野則子教授らの調査では安倍総理による一斉休校・緊急事態宣言により児童相談所では性的問題の相談が激増し、世帯の貧困も深刻化したことが分かっています(内閣府「子どもの貧困対策に関する有識者会議第17回会議・資料4」令和3年7月28日)。

子どもたち、そして親にとっても、不意打ちの一斉休校は深い爪痕を残したのです。