外に共通の敵をつくると仲間意識ができる

そう考えると現在の国際情勢というのは、なかなか抜け道がないなというのが正直なところです。ただ、これだけ中国が暴れていれば、中国自身の立場が弱くなると同時に、ほかの国が結束して各国の関係がよくなっていくのかも、というのはひとつの希望です。

ひと昔前に、あるバラエティ番組で嫁姑問題をテーマに、若い女性タレントさんたちが「いかに義理の母とうまくやっていくか」ということを話し合っていました。そのときにびっくりしたのが、ある女性タレントの発言でした。ほかの人たちが「お母義さまと共通の趣味をつくります」とか、「一緒にお華のお稽古にいきます」と言うなかで、その人は「私はお義母さまと一緒に共通の敵をつくります」と言ったんです。それを見て、僕は嫁姑問題も国際政治と同じだなとしみじみ思いました。国際政治においても、共通の敵をつくると仲良くなれますから。

日本、アメリカ、オーストラリア、インドがタッグを組んだ「Quad(クアッド)」もそうですよね。オーストラリアとインドは、もともと仲が悪かったのに、中国という共通の敵を介して、クアッドの4カ国で仲間意識ができている。G7サミットも同じです。

とはいえ、日本は中国と商売をしなければいけませんから、表向きは中国の人権問題はけしからん、と言いつつ、粛々と商売をやっていく。日本がしたたかに生き残るには、民主主義を守って商売をしっかりやっていくという基本ラインをキープする以外に方法はないのでしょう。

奥山 真司(おくやま・まさし)
地政学・戦略学者

戦略学Ph.D.(Strategic Studies)国際地政学研究所上席研究員。カナダ・ブリティッシュ・コロンビア大学卒業後、英国レディング大学院で、戦略学の第一人者コリン・グレイ博士に師事。近著に『サクッとわかるビジネス教養 地政学』(新星出版社)がある。