貯蓄率が下がるのは高齢化のためだけではない

──日本人はまじめにコツコツ貯金するイメージがありますが……。

【本川】ところが、案外そうでもないんですね。グラフ①は内閣府の資料による家計貯蓄率の推移です。貯蓄率はここ30年ほども下がり続け、2013年度にはいったんマイナスまで落ち込みました。この原因としてまず考えられるのが高齢化です。貯蓄を取り崩して生活する退職者が増えれば貯蓄率は下がりますからね。ただ、主要国と比較すれば、高齢化だけが原因ではないことがわかります。日本と同様に高齢化が進んでいるドイツなど欧州諸国では、貯蓄率が必ずしも下がっていないのです。

──ほかの原因とは何でしょう?

【本川】貯蓄率が下がる原因には高齢化のほか社会保障の充実、消費性向の上昇、景気上昇、成長力低下などがありますが、日本については低成長が最大の要因と考えています。高度成長期は使う以上に所得が増えたので貯蓄率が上がりましたが、オイルショックを経て反転、特にバブル崩壊後は長く低下傾向が続いています。所得が減っては貯蓄できない、というのが真相でしょう。結局、日本人はもともと貯蓄好きだったわけではない、ということですね。

「日本人は貯蓄が好き」は本当か