妊娠届け出数も婚姻件数も大きく下落

2021年の出生数激減を決定づける要因の1つである2020年の妊娠届け出数の減少から見ていこう。

厚生労働省によれば、87万2227件で過去最少となった。1~4月は前年と大差はみられなかったが、5月に前年同月比17.6%もの下落を記録した。

妊娠届け出は法令上の時限はないが、厚労省は妊婦健康診査などの母子保健サービスを適切に受けられるよう、妊娠11週までの届け出を勧奨している。2020年5月といえば政府の緊急事態宣言中だ。届け出が遅れた人も相当数いただろうが、こうした事情を割り引いても大きな下落幅であった。感染が深刻化するのと歩調を合わせて、妊娠を避ける夫婦・カップルが増えたのである。

日本家族計画協会が男女約1万人(20~69歳)を対象にした調査によれば、1回目の緊急事態宣言下では、性交渉が減った。調査対象のうち、男性の4割、女性の6割は性交渉をしていないと答えたのである。

妊娠届け出数は、7月が10.9%減となるなどマイナス傾向が続いた。1~12月までのトータルでみると、前年同期間比では4.8%減、実数にして4万4363件の減少である。もともと少子化傾向にあるためマイナスとなることには驚きはないが、大差が見られるようになった5~12月だけで比べるならば7.0%減だ。この5~12月というのは、2021年の出生数に反映される時期にあたる。

【図表1】結婚する人が激減すれば、少子化は加速する一方
出典=『未来のドリル コロナが見せた日本の弱点』(講談社現代新書)

“令和婚ブーム”を割り引いても著しい減り方

次に2021年の出生数の激減を決定づけるもう1つの要因の婚姻件数の減少だが、人口動態統計月報年計(概数)によれば、2020年は前年比12.3%もの大激減であり、戦後最少の52万5490組にとどまった。

なぜ、婚姻数が翌年の出生数を占う材料となるかといえば、日本の場合には結婚と妊娠・出産とが強く結びついているからだ。非嫡出子の割合は2.33%(2019年)と各国と比べて極めて低い水準にある。結婚したカップルのすべてが子供をもうけるわけではないが、婚姻件数の減少は翌年の出生数の減少に色濃く影響する。

前年の2019年は改元に伴う「令和婚ブーム」もあって婚姻件数が7年ぶりに増加した。そうした特殊要因があったことを割り引いても減り方が著しい。