投資で一番やってはいけないこと

そして最後4つめは「柔軟に考える」ということです。経済は生き物です。過去に良かったことがこれからも良いとは限りません。

大江英樹『あなたが投資で儲からない理由』(日経プレミアシリーズ)
大江英樹『あなたが投資で儲からない理由』(日経プレミアシリーズ)

一般的に人間の行動として「朝令暮改」はよくないということが言われますが投資の世界では「朝令暮改」はどんどんやるべきですし、場合によっては「朝礼朝改」だってありなのです。投資で一番やってはいけないことは特定の運用方法や特定の人の言うことを信じること、すなわち原理主義に陥ってしまうことです。

さて、こんなふうに考えてくると今日のコラムのタイトルも理解できるのではないかと思います。「占い」というのは自分の将来の見通しや判断を人に聞いて委ねるということです。でもこれは投資では一番やってはいけないことなのです。投資は人の意見は参考程度にはするものの、すべからく自分だけの判断で行うもの。ところが占いが好きな人は、言わば人に判断してもらうことが好きなので、評論家や金融機関が勧める推奨銘柄を何の疑いもなく買ってしまう恐れがあります。朝出かける前にテレビのニュース番組で「今日の運勢」を聞いて楽しむぐらいならともかく、占いに凝ってしまうような性格の人は、投資はすべきではありません。

考えて、考えて、考え抜く

またSNS好きな人も投資の面では困ったことがあります。それはさまざまなニュースや情報が手軽に入るので、深く考えることをせず、安易に信じてしまいがちになるからです。もちろん単に読み流すだけならそれでいいでしょうが、その情報を基に判断をするというのであれば、SNSの情報だけを信じるのはとても危険です。私はSNSに限らず新聞や雑誌に書いてあることでも、自分の大事なお金をどう投資するかの判断をする場合はそれだけでは絶対に信用しません。必ず元データを見てその上でそれがどう影響するのかということを自分で考えて判断します。

先ほど投資で一番やっていけないことは「原理主義に陥ることだ」と言いましたが、占いやSNSの好きな人は、大体において人が良いためにすぐ信用してしまう傾向があります。でも本当に投資で大事なことは自分の頭で考えて、考えて、考え抜くことです。何事に対しても安易に信じるのではなく、自分の目で確かめたり判断したりすることが求められるのが投資なのです。

私は今まで投資で失敗した人は数限りなく見てきましたが、いずれも前述した「投資で成功するための四つの原則」とはほど遠い思考や行動パターンの人ばかりでした。やはり投資で最も大事なことは、人に頼るのではなく、“自分の頭で考える”ということに尽きると思います。

大江 英樹(おおえ・ひでき)
経済コラムニスト

大手証券会社に定年まで勤務した後、2012年に独立し、オフィス・リベルタスを設立し、代表に。資産運用やライフプランニング、行動経済学などに関する講演・研修・執筆活動などを行っている。近著に『定年前、しなくていい5つのこと』(光文社新書)など。