企業の存在意義を伝える「パーパス・ブランディング」
SK-Ⅱの狙いはズバリ、「パーパス・ブランディング」にあります。
パーパス(purpose)とは「目的」という意味で、「自分たち○○社は何のために存在しているのか」という企業の存在意義を伝えるブランディングのことです。SK-Ⅱはこの動画によって、「運命を変えようと努力する女性をサポートする」という企業の存在意義をアピールしているのです。
パーパス・ブランディングは「ブランド広告」の一種なので、商品を売ることが目的ではありません。商品を売る前に、まずはブランドを好きになってもらうことを目指している。だから商品が出てこないのです。
実はいまマーケティング界では、このパーパス・ブランディングの手法が注目を浴びています。特に外資系企業はこれをいち早く取り入れ、「私たちは社会的な貢献を果たしているブランドです」と伝えることで、消費者の信頼や共感を獲得しようとしているのです。
素人の動画のほうが再生回数が多い
「センターレーン」より以前から、企業によるエンターテインメント性の高い動画はありました。特にインターネットが普及してからは、テレビの15秒枠のコマーシャルでは短すぎて表現できない世界観を、自社サイトの動画で見せるようになってきた。
古くは、おじさん向けと思われていた高級車BMWが、ガイ・リッチー監督によるマドンナ主演のムービーなどによって、若者からの支持を得ようとした海外の事例に端を発します。日本では、岩井俊二監督の「花とアリス」がキットカットのウェブサイトで公開され、女子高生の人気を博しました。
このようなムービーと、池江選手のムービーの違いは何かというと、前者がリッチなコンテンツで視聴者を楽しませることに主眼を置いているのに対し、後者は企業の存在意義を伝えようとしていることです。
いまや素人がコストゼロで撮った動画がYouTubeで何万という「いいね!」を得る時代。高い製作費をかけて視聴者を楽しませるだけの動画をつくるより、企業のメッセージを明確に伝えてブランドを育てようというのが、いまの考え方なのです。