施設内で何が起こっているのか

そんな中、今回の法案の審議の中で焦点があたったのは、入管の手続きや入管施設内での処遇だ。

入管の施設で亡くなったウィシュマさんは、留学ビザで来日。日本語学校の在学中にパートナーである男性からDVを受け、退学せざるをえなくなり、在留資格を失った。パートナーから逃げ、静岡県沼津市の交番に駆け込み助けを求めたが、ビザが切れていたことを理由に昨年8月に入管施設に収容された。

その後、体調をくずし、亡くなる直前には歩けなくなるほど衰弱していたという。入管施設内で必要な医療が受けられなかった可能性が国会の議論で指摘されている。彼女が収容されていた名古屋入管は、「保安上の理由」として、遺族や国会議員に対して、ウィシュマさんの収容中の最後の様子を写したビデオの公開を拒んでいる。

「一番の問題は、施設内部の実態が、外からはよくわからないことです。閉鎖された、人を拘禁する施設で、『殴った』『殴らない』、お医者さんに『行けた』『行けない』という話がでた時に、外部の第三者が入らないと実態を知ることが非常に難しい。また、入管から独立して入管のことを監視する機関がないのも問題です」と石川さんは指摘する。

国連も「国際法違反」と指摘

「たとえばイギリスには、査察委員会があり、オンブズマンがあって、収容施設を重層的にモニタリングする体制があります。査察委員会は、予告なく施設を査察できる。施設の全てにアクセスでき、収容されている人たちとも話すことができる。日本の入管にも査察委員会はありますが、事務局が入管になっていて、入管から指定された日に査察に行くことになっています」(石川さん)

また、多くの国が、在留資格のない外国人の収容の必要性や仮放免の審査については、入管とは別の、独立した司法組織が判断する仕組みをもっている。日本の場合はこうした審査は入管が行い、仮放免の許可、不許可に関わらず、理由は明らかにされない。また、収容期間にも上限が設けられていない。

国連の「恣意的拘禁作業部会(WGAD)」は、昨年9月、日本の入管施設の、このような上限のない長期収容や、司法判断を得ない収容を「国際法違反」とし、日本政府に改善を促している。

難民申請者に厳しい国、日本

ウィシュマさんのケースでは、入管施設の閉鎖性に注目が集まったが、今回の入管法改正案ではさらに、難民申請者の処遇についても議論された。

日本は難民申請がなかなか認められない国として国際社会で知られていることは、すでに多くの人がご存じだろう。昨年の日本での難民申請件数は1万1914人だったが、難民認定されたのはそのうち47人にすぎない。また、2019年のデータでは、日本での難民認定率が0.4%だったのに対し、カナダは55.7%、イギリスは46.2%、アメリカは29.6%、ドイツは25.9%だった。一番低いフランスでも18.5%と、日本の認定率は格段に低い。

難民認定数、認定率の比較(2019年)
出所=UNHCR Refugee Data Finder、法務省発表資料から難民支援協会作成