80年代のバブルとコロナバブルの相違点

「なぜみんな貯金じゃなくて株なんだ? コロナ禍で先行き不透明な時代なのに」。そう思われる方もいらっしゃるでしょう。でもこの場合、貯金よりも株に資金が流れるほうが自然です。なぜなら世の中にお金があふれると、お金の価値が下がり、金利も下がります。そうすると、貯金のようにお金のままで財産を持っていると、財産価値が目減りします。それを防ぐには“お金以外のもの”で財産を持とうという心理が働き、その結果、株式や不動産、金、ブランド品、アートなどを買う人が増えて、それらの価値が上がり、そこからバブルに火がついてゆくのです。

空から降ってくるお札
写真=iStock.com/fatido
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ただ、現在の株高の背景に日銀のETF買いがあるとするならば、少し気がかりな点があります。もし、これが日銀主導の官製バブルなら、日銀がETF買いを止めたとたんにはじけてしまうのではないかという懸念です。これはどうなのでしょう。

結論から言うと、恐らくそうはならないと思います。今のバブルは、いつまでとは断言できませんが、もうしばらくは続きそうです。なぜなら現在のコロナバブルは、1980年代のそれとは違い「ワールドワイド」なものだからです。

考えてみれば、いま破格の金融・財政緩和を行っているのは、日本だけではありません。世界の主要国すべてです。どの国もコロナ禍を耐え忍ぶために、必死で世の中にカネを垂れ流しています。しかも今の株式市場は、昔と違って世界とつながっています。つまり今は「世界中の緩和マネーが、世界の投資家たちによって、世界中の株式市場をグローバルに飛び回っている」状況なのです。

これに対し、かつて私たちが経験した80年代のバブルは、ローカルな「日本限定バブル」でした。つまり、あの時は「日本の不況対策用の緩和マネーが、当時グローバル化が進んでいなかった日本の株式市場で、日本人投資家だけの手によって動いたもの」だったのです。ということは、どうやら今回のコロナバブルは、主要国すべての通貨当局が同時に急ブレーキを踏まない限り、いっぺんにはじけることはなさそうです。これは80年代の日本バブルが、通貨当局の急ブレーキで一気にマネーの流れが止まり、はじけてしまったのと、大きく違う点です。