「貯蓄が多いので豪華な食事をしている」ことが見えてくる
さらにこの図表の支出の項目を見てもおかしいと思うところがあります。例えば支出の項目の中にある「食料」です。その金額を見ると6万4444円となっていますが、はっきり言って、高齢夫婦世帯にとって、この金額は多すぎます。実際に私も高齢夫婦世帯ですが、毎月の食費は大体3万5000円前後です。若い独身の人で毎日外食している人ならともかく、高齢夫婦世帯の場合、日常的には家で料理をこしらえて食べることが多いでしょうから、夫婦二人でこの金額はどう見ても多すぎるのです。でも外食を増やせば金額はいくらでも多くなりますね。
つまり前述のようにたくさん貯蓄を持っているから、時には豪華な外食に行く、その結果毎月の収支がマイナスになっても貯蓄額が多いので特に問題は無い、というのが支出を見ていて浮かび上がってきます。このように一つひとつの項目を見ていくと、不自然な部分も出てきますので、大事なことは自分で数字の検証をするということです。
こういったものに限らず、報道されているものについては、その数字が一体どこから出てきているのかをきちんと探す必要があります。いわゆる「一次情報」というやつですね。ニュースやメディアのコメントに対して「そうなんだぁ」と聞き流すのではなく、本当にそれが正しいのかどうかをエビデンスで確認することが重要なのです。自分の生活にあまり関係のないことであれば聞き流してもかまいませんが、老後生活資金というのは遅かれ早かれ重要な問題になってきます。だからこそ正しい数字と認識を持っておくことが大切なのです。不安に煽られて変な金融商品を購入してしまうことのリスクのほうがよっぽど大きいと思います。
「自分の数字」で考えることが大事
結局大事なことは、こうしたあおりに惑わされることなく、自分の生活に基づいた収支の計画とその実態の把握をおこなうことです。多くの人は家計簿を付けていないようですが、これは自分の収支管理にとっては必須のものだと思います。私は今から10年ほど前、定年になる前から自分で家計簿を付けていますので、おおよその支出の感覚はつかめます。前述の食費が多いというのも自ら家計簿を付けていたからこそ不自然な数字だという感覚を持つことができたのです。
今は家計簿アプリがありますから、収支の把握はそれほど大変なことではありません。自分で家計収支のコントロールを実行するという習慣はぜひ付けておくべきだろうと思います。
1952年大阪府生まれ。オフィス・リベルタス創業者。大手証券会社で個人資産運用業務や企業年金制度のコンサルティングなどに従事。定年まで勤務し、2012年に独立後は、「サラリーマンが退職後、幸せな生活を送れるように支援する」という理念のもと、資産運用やライフプランニング、行動経済学に関する講演・研修・執筆活動を行った。日本証券アナリスト協会検定会員、行動経済学会会員。著書に『投資賢者の心理学』(日経ビジネス人文庫)、『定年男子 定年女子』(共著・日経BP)、『知らないと損する 経済とおかねの超基本1年生』(東洋経済新報社)、『お金の賢い減らし方』(光文社新書)など多数。2024年1月没。