予定表に描かれた「♡♡♡」

ただ効率を重視し、有無を言わせず変えたわけではない。荒川校長の物腰はやわらかく、誰に対してもフラットだ。校長室のドアは常に空いており、子どもたちも保護者も教員も、気軽に訪れる。校長は誰でも笑顔で迎え入れ、「甘いのがいい? それともブラック?」などとたずねながら、教員に対しても自らコーヒーやお茶を入れる。冗談を言い、意見を言いやすいリラックスした雰囲気を作る。

「大きな行事などの提案も、それぞれ都合の良いタイミングでOneNoteで起案して共有し、前もって意見を交換しておけば、話し合う時間を濃密にできますよね」

こうしてICTツールをうまく使えば、仕事量としては大きく変わらなくても、拘束時間は減らすことができる。「よく『無駄を省いて早く帰るようにね』と声をかけられます。管理職が早く帰るので、職員室全体が『早く帰ろう』という雰囲気になり、残業も減りました」(狛江第三小学校教員)と、現場でもその効果が出てきている。

職員室の予定表には、かつて職員会議のあった水曜日の午後に「♡♡♡」と記入されており、「ハートフルな日」と呼ばれている。大きな行事の前には必要に応じて会議が入るが、半休を取ったり教材研究をしたりと、それぞれが思い思いに過ごす楽しみな時間になった。昨年2020年からは、特に在宅勤務や時差出勤などを積極的に活用するようにした。

職員室の雰囲気が変わった

「以前はみんな、難しい顔をして職員室に集まり、余計な発言をする暇も余裕もありませんでした。職員朝会がなくなったため、授業前の時間を授業の準備などに使えるようにもなったようです。『ハートフルな日』が定着すると、心にも余裕ができたのか、みんなが職員室に自然と集まるようになりました。あちこちでわいわいと立ち話が始まり、雑談が増えています。自由に情報交換をし、お互いに悩みを相談し笑い合うようにもなり、今はとてもいい雰囲気です」(荒川校長)

多くの学校では、教員同士で話すのは最低限の連絡事項や打ち合わせだけ。あとは各自教室にこもり、時間に追われながら作業を進めることも多い。他校から異動してきた教員は、「どうしてこんなにみんな仲がいいんですか」と驚くという。「ハートフルな日、これからもぜひ続けて欲しい」と教員からも大好評だ。