自分の子育てが間違っていなかったと確信した瞬間
娘はのびやかに育ち、日曜日に二人で近所を歩いているとあちこちで声をかけられる。中学生になると家にはいつも友だちが集まり、娘は相談相手になっていた。時おり小林も早く帰宅すると、子どもたちの会話に加わった。
「すると『ひろみちゃんのママはいいな、話がわかる』と思われて、今度は私に相談するようになります。いろいろ話題が豊富で人脈も持っている大人という存在ですね。娘も小さい頃は家にいるお母さんが羨ましかったようだけど、母親に求めるものも変わってきたのでしょう。中学のときに初めて言ってくれました。『うちの子で良かった』って」
自分の子育ては間違っていなかった、そう思えた瞬間だった。
娘の成長を見守りながら、小林の胸にも次なる夢がふくらんでいく。自分の美容法をもっと世の中に広めたい。そのためには自分の考え方に共感し、それを伝えてくれる人材を育てなければならない――。いずれ独立して、小さな寺子屋のような学校を創りたいと胸に秘めていた。
(後編へ続く)
1964年新潟県生まれ。学習院大学卒業後、出版社の編集者を経て、ノンフィクションライターに。スポーツ、人物ルポルタ―ジュ、事件取材など幅広く執筆活動を行っている。著書に、『音羽「お受験」殺人』、『精子提供―父親を知らない子どもたち』、『一冊の本をあなたに―3・11絵本プロジェクトいわての物語』、『慶應幼稚舎の流儀』、『100歳の秘訣』、『鏡の中のいわさきちひろ』など。