家庭との両立のために18時退社を決め、限られた時間で数々の大事業を成功に導いてきた佐々木常夫さんは、9割の中間管理職はいらないと断言します。不要な管理職たちは、毎日どのような仕事をしているのでしょうか――。

※本稿は、佐々木常夫『9割の中間管理職はもういらない』(宝島社新書)の一部を再編集したものです。

日本のサラリーマンの通勤風景
写真=iStock.com/paprikaworks
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中間管理職と「クソどうでもいい仕事」

前回(不要不急の仕事を生み出す「9割の中間管理職」は不要である)も紹介したように、今、現代社会分析の書として注目を集めている『ブルシット・ジョブ』の著者である文化人類学者デヴィッド・グレーバーは、「テクノロジーが発展すれば人間は長時間働かなくてもよくなる」というケインズの週15時間労働達成の予言について言及しています。

グレーバーは、それをこなす自分たちですら必要がないと思っている仕事・役職についている中間管理職のような存在、つまり「クソどうでもいい仕事」という不必要な仕事が新しく生まれたことによって、せっかくのテクノロジーの進展をうまく活用できないでいることを指摘しました。

これはまことにユニークな分析であるとともに、現代社会の問題を鋭くえぐり出していると言えます。

デジタル化でペーパー過多になる矛盾

また、同じく前回紹介した『ブルシット・ジョブ』の姉妹本とも呼ぶべき、『官僚制のユートピア』という本では、20世紀後半以降、「書類作成(PAPERWORK)」という言葉や「業績評価(PERFORMANCE REVIEW)」という言葉の、英語の書物で登場する頻度がいずれも右肩上がりになっている点を、グラフを挙げて指摘しています。

グレーバーはこれを、実際にビジネスの現場で、書類作成や業績評価に費やされた時間のデータに近いものとして、提示しているわけです。

これは、せっかくテクノロジーが発達しているのに、ビジネスの効率化のために時間を使うことをせずに、不必要な仕事を生みだすために使われてしまっていることを示すよい例でしょう。つまり、デジタル化を推し進めて、ペーパーレスになるはずが、ペーパー過多になっているのです。

結局、業績評価を含めた分析を書類化することに1日を費やしてしまうような仕事、そしてその書類を自分で出力して提出したり、配ったりするだけの仕事、そんな仕事が前世紀の後半からずっと増え続けてきたのです。これは、人間がテクノロジーの発展についていけていないということでしょう。

私も自分の長いサラリーマン生活のなかで、そのような不必要な中間管理職というものに何度も出くわしました。グレーバーの指摘を受け、改めて本章では使えない9割の中間管理職と、使える、あるいは必要とされる1割の中間管理職について見ていきたいと思います。