自ら気づくしかない

マニック・ディフェンサー自身にとっては、自ら気づくことしか解決法がありません。自分自身がこれまでの生活を振り返ったときに、必ずストレスフルな状況があり、そこで自分の能力や存在を自分で認められていないことに気づくこと。そもそもつらさや不安を感じてはいけないととらえ、それを抑えるために、こういう症状が出ていますから、僕たち精神科医は、自分の素直な気持ちをストレートに感じていいというのをわかってもらうことから始めます。

SNSがなかった時代は、身近な人に自分のすごさをひけらかして、だんだん周囲から孤立していくことで、自ら気づくことができましたが、SNSが登場してからはアピールしやすくなったうえ、アピールを垂れ流しても孤立することはなく気づきにくくなりました。スルーされてもそういうものかと終わりますし、誰も止めません。本人はずっと気づかず暴走していくのです。

ただマニック・ディフェンサーは、いずれエネルギーが枯渇します。自分は楽しく充実している時間をアピールしなきゃいけないけれど、体がへとへとになってできなくなる。それができなくなることで、さらに落ち込んで、やっぱり自分はダメな人間だと、心もまいってきます。

毎週末、旅行やイベントの写真がSNSに上がっていたのが、パタッと消えたら、そのサインです。エネルギー補給したら、また復活して同じようなものが上がってくるというパターンが多いですね。

自分を認めることが最大の予防策

誰もがマニック・ディフェンサーになる可能性はあります。それを防ぐには、ふだんから「毎日頑張っている」「役に立っている」と、自分で自分を認めてねぎらうことですね。人から評価される前に、自分で自分のことを評価してあげること。それがマニック・ディフェンスを防ぐ何よりの手立てになります。

ですから、自分が何かおかしいと思ったときは、きちんと休むこと。自分一人で過ごせる時間をちゃんととって、心も体もいたわらないといけないですね。それからスマホやパソコンはオフにして、SNSは見ない。SNSで他人の生活や人生が見えると、不安がわきおこってきますから。時には「知らぬが仏」も大切だと知っておいてください。

構成=池田純子

井上 智介(いのうえ・ともすけ)
産業医・精神科医

島根大学医学部を卒業後、様々な病院で内科・外科・救急科・皮膚科など、多岐の分野にわたるプライマリケアを学び、2年間の臨床研修を修了。その後は、産業医・精神科医・健診医の3つの役割を中心に活動している。産業医として毎月約30社を訪問。精神科医・健診医としての経験も活かし、健康障害や労災を未然に防ぐべく活動している。また、精神科医として大阪府内のクリニックにも勤務