子どもの自己制御力は、親の養育態度次第

非認知能力として言われているものの中で、様々なことを達成するための基礎であり、向社会的行動(他者への思いやりを持った行動など)・学習能力・リテラシーなどあらゆる場面で必要となってくる重要なものの一つに、自己制御があります。幼児の自己制御機能には、「自分の意思を明確に持ち、これを表現・主張する」という自己主張的側面と、「自分の意志や欲求を抑制・制止しなければならないとき、抑制できる」という抑制的側面とがあります。これらは3歳頃から発達しますが、この形成には、親の養育態度が大きく関わっていることが明らかにされています。

研究上、親の養育態度は大きく三つに分類されて考えられています。統制(子どもの意思とは関係なく親が子どもにとって良いと思う行動を決定し、それを強制する行動)と応答性(子どもの意図・欲求に気付き、愛情のある言語や身体的表現を用いて、子どもの意図をできる限り充足させようとする行動)の2つを軸にした図表1で示す3種類です。

養育態度の分類
出所=Baumrind, D. (1971)より作成

「権威的態度」の養育で自己制御が健全に発達する

権威的態度の親とは、子どもとの温かく、協調的な関わりを持ち、その温かさの下で柔軟に統制を行うことができます。そのため、そのような養育態度のもとで育つ子どもは、自己主張と抑制がともに高い傾向があります。つまり、この3つのタイプの中で最も子どもの自己制御(非認知能力)が健全に発達し、その影響は幼児期から青年期にわたり一貫して起こることが示されています。

権威主義的態度の親は、統制は高いが応答性は低いタイプで、子どもを服従させ、子どもの心理や行動を厳しく統制するような特徴を持ちます。つまり、子どもの様子を察知することなく厳しく統制を取ろうとするあり方です。そのような環境で育つ子どもは、主張性が乏しく攻撃性も低い、親に対して従順な子どもであるということが示されている一方、他者には、攻撃的な反応を示す傾向が強いことがわかっています。

これは、子どもが、家庭で自分の欲求を満たすことができず欲求不満の状態になっているためと考えられています。また、権威主義的態度をとる親は、子どもの様子に応じて対応せず、一方的に統制しようとするため、子どもは、その親子の関係性をお手本として、他者との関係を作る(親が自分にしている態度を他人に取る)時、自分も相手に対して一方的に強い態度をとってしまうためだと考えられています。