私は“強いリーダー”ではない

2012年にジャパネットがV・ファーレン長崎のメインスポンサーになるまで、ほとんどサッカーを見ていなかったという春奈氏だが、専門家の声に耳を傾けながら物事を進めれば、必ず結果を得られると考えている。

「ほかの業務、例えば社内のシステム開発でも、分からないことがあったとしても判断はしなくてはならない。だから、勉強したり、人の意見を聞いたりして判断材料を集めます。サッカーの現場に関しても同じ。私はサッカーの専門的なことは分からないですが、強化担当者やアカデミーダイレクターなどの意見を聞いて、自分なりの判断ができるようにしています」

「もともとサラリーマンにも、経営者にもなりたくなかった」という春奈氏だが、「儲けるためではなく、世の中の役に立つための手段として、会社という存在がある」と話す。

「特にスポーツチームは、非常に公共性が高い。さらにスポーツの場合は勝ち負けがあり、必ずしもやったこと全てが結果に表れない難しさがあります。社長である自分が頑張ってもどうにもならないこともある。そういった苦しいことも、人と一緒に乗り越えていけるのがスポーツの醍醐味だなと感じています」

社長としての自分は「1人でみんなを引っ張っていくような、強いリーダーではない」という春奈氏。「その時その時にできることを、みんなで協力しながらやっていく」というスタンスで、社長就任直後に襲ったコロナ禍も、かじ取りをしてきた。そんな彼女がJリーグに新たな風を吹かせ、V・ファーレン長崎をJ1常連クラブに育て上げる日を楽しみに待ちたい。

文=元川 悦子

髙田 春奈(たかた・はるな)
V・ファーレン長崎代表取締役社長

1977年5月、長崎県佐世保市生まれ。国際基督教大学卒業後、2001年にソニーに入社。主に人事の仕事に携わる。2005年にジャパネットたかたの人材開発を担うジャパネットソーシャルキャピタルを設立。2010年にもエスプリングホールディングスを発足させ、広告業務も請け負う。2015年にはジャパネットホールディングス取締役となり、同グループの人事、広告業務等を担当。2018年からV・ファーレン長崎上席執行役員を兼務し、2020年には父・明氏から同クラブ社長を引き継いだ。