「威張って業績が上がるなら、なんぼでも威張ります」
「玉置さん、サンコーは居心地のいい会社だから長く居られる。社長といると癒やされる、なんて言ってましたよ」
こう伝えると、
「あはは、そんなこと言うてましたか。玉置、僕が子供の頃からおるんでね、その頃すでに婆さんでしたけど」
と言って、からからと笑った。
ギネスに認定された「世界最高齢総務部員」が勤めるねじの専門商社、サンコーインダストリーの社長、奥山淑英(47歳)は創業社長から数えて三代目に当たる。
「たしかに、オヤジは威張らない人間ですね。威張って業績が上がるんやったらなんぼでも威張りますけど、業績に関係ないことはオヤジも僕もする意味がないと思ってますんで」
奥山の経営に対する考え方は、大阪的というのかなんというのか、極めて合理的でありながら、結果としては人情味があるという不思議なものである。
「僕も含めて、社員はサンコーのカルチャーにドはまりしてると思いますが、ひとことで言うと『みんなでがんばって、みんなで分け合おう』ということですわ。会社というのはやっぱり集団生活ですから、明日も楽しく会社に行きたいと思えるように、みんなでいい環境をつくっていこうということです」
採用ではスペックの高さを求めない
たしかに、社内の雰囲気は明るいし、職場全体に活気がある。
「このカルチャーを裏返して言えば、スペックの高い人間はあまり求めていないということなんです。スーパー級の人間をたくさん集めたら、おそらく業績はアップするんでしょうが、採用の時もそういうことは求めていない。見ているのは、サンコーに合うか合わないかぐらいです」
個人にスペックの高さを求めないということは、どうやら、玉置の言う「個人が追い込まれない」ことと関わりがありそうだ。
個々のスペックは高くないと自認する集団は、いかにして競合他社と戦っているのだろうか。