今年初め、総合商社の丸紅が、2024年までに新卒総合職採用に占める女性割合を4~5割にすると発表。これに対しては好意的な意見だけでなく、「逆差別ではないか」「性別問わず能力で採用すべき」といった反対の声も上がりました。男性学が専門の田中俊之さんが指摘する「反対派が知らない事実」とは──。
笑顔の女性
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「男社会のままでは限界がくる」という危機感

商社と言えば、従来は総合職のほとんどが男性で、典型的な男社会と言われてきました。これは丸紅も同様で、以前の女性割合は総合職で約1割。今春入社の総合職では過去最高の3割にまで上昇したそうですが、まだまだ不十分だということで、約半数を目指すという決定に至ったようです。

そもそも、これまで男社会でやってきた企業が、今になってなぜ女性総合職を増やそうとしているのでしょうか。柿木真澄社長の記者会見はこの疑問に的確に答えるもので、とてもすばらしいと思いました。

男性が8割を占める会社が、広く社会課題の解決を達成できるのかという問題意識、このペースでは何十年も経たないと状況が変わらないから今すぐ女性を増やすんだという決意、そして同質的な集団から脱却しないと環境の変化に対応できなくなるという危機感。いずれのコメントも、しっかりとしたビジョンを感じさせるものでした。

トップダウンの変革

男社会からの脱却――。こうした変革は、人々が内発的に変わっていってくれたら簡単なのですが、なかなかそうはいかないものです。だからこそ丸紅はトップダウンで行う、つまり強制力を働かせるという手段を選んだのだと思います。これが他社でもできるかどうかは、経営層が「男社会のままでは限界がくる」と思えるかどうかにかかっていると言えるでしょう。