バブル入社世代を70歳まで雇用し続けることは厳しい
バブル入社世代は1987年~1992年入社だが、大卒だと50代後半にさしかかっている。一部上場企業の流通業の人事部長は「今の再雇用者は毎年50~60人程度だが、数年後には毎年数百人単位で増えてくる。今は現役時代の仕事を続けながら後輩のサポートをお願いしているが、増えてくると新たな仕事先を見つけないといけなくなる。70歳まで雇用し続けるのは正直言って厳しい状況だ」と語る。
加えて②の人件費の増大も避けられない。多くの企業が人件費の総原資枠を設定し、それを超えない範囲での経営を強いられている。少なくとも中・長期的に人件費を維持するための賃金改革が必須となる。ただし、高齢社員が増加すると、③のように世の中の正社員と非正規の格差が企業内で顕在化してくる。今でも定年前より低い給与で働く再雇用社員のモチベーションの低下が大きな問題になっている。必然的にその働きぶりが現役社員にも悪影響を与えかねず、処遇を向上させることが求められている。
現役世代にとってリスクが大きい制度変革3つのシナリオ
また、コロナ禍のビジネスモデルの変容やデジタル技術の進展によって高齢者に限らず、社員の新たなスキル習得が必要になっている。④の新技術の習得については比較的柔軟な若い世代と違い、高齢世代を再教育するにはより困難さを伴うだろう。
さらに⑤については、多くの企業では人件費管理と同じように事業に必要な人材を極力増やさない「定員管理」を実施している。高齢社員が増えることになれば、新卒採用数にも影響を与える。これまでは定年退職者数や離職率を考慮して新卒や中途社員の採用数を決めていたが、定年後も会社に留まる人が増えれば、従来のように新卒一括採用による大量採用も難しくなるだろう。
こうした課題を克服するには抜本的な賃金・雇用制度の変革が不可欠であり、現役世代も間違いなく影響を受けることになる。では企業は具体的にどういう行動を取ってくるのか。考えられるシナリオは以下の3つだろう。
② 脱年功制による賃金制度改革と昇進・昇格の厳格化
③ 早期退職募集制度を活用した定期的なリストラの実施