うつ病の発症から学んだこと

私は社会人人生で二度も精神疾患(うつ病)を患いました。新卒で入った通信会社で5年目を迎えた29歳のときと、マイクロソフトで本部長を務めていた39歳のときです。共に責任のある仕事を任されて充実したビジネスライフを送っていた時期でした。仕事が楽しくて寝る時間を惜しんで深夜まで働いていました。働けば働くほど仕事をこなすことができていたので、ある種ランナーズハイのようにテンションが高い状態でした。当時は仕事が楽しくて仕方がなかったのです。

越川慎司『週休3日でも年収を3倍にした仕事術』(PHP研究所)
越川慎司『週休3日でも年収を3倍にした仕事術』(PHP研究所)

ただ、いま振り返ると、長く働いている自分に酔っていたのかもしれません。当時は凝ったパワポ資料を作ることにこだわっていたり、Excelのマクロを組んだりすることで少し自慢げになっていました。

ところがある日突然起きられなくなり、靴の履き方もわからなくなってしまったのです。産業医に診てもらい毎日7時間以上の睡眠を2週間続けたところ復調でき、無事職場復帰できました。このときに睡眠の大切さを知ったのです。

この2回の失敗によって得た学びをもとに、クロスリバーのメンバーには1日6時間以上の睡眠を義務付けています。時差のある地域と深夜にオンライン会議を行った場合は、翌日は始業時間を11時からにしたり休暇を取ったりしてもらっています。

「健康貯蓄」を大切にしながら、永く働き続ける時代に

いくら仕事で成功しても、健康を損なっては意味がありません。睡眠不足になるとパフォーマンスが落ちるだけでなく、私のように精神疾患で働けなくなるリスクも高まります。

若いうちは残業時間を気にせずに働きたい気持ちもよくわかります。しかし精神疾患になると復帰がたいへんです。私は幸運にも数週間で仕事復帰できましたが、やはりうつ病になった私の友人は10年以上自宅から一歩も出ることができていません。

60歳を過ぎても多くの人が働き続ける時代になりました。寿命が延びていく中で、労働「期間」は今後も延びていくと考えてよいでしょう。

一方で、働き方改革に象徴されるように、日々の労働「時間」の上限はどんどん抑えられる傾向にあります。

限られた時間の中でどれだけの成果を出すことができるか、というルールに変わったと理解してください。無制限に働いて成果を出すのはダメなのです。

健康は貯蓄と一緒です。無理をしていくと健康貯蓄が尽きてしまいます。十分な睡眠をとり、ストレスをコントロールして健康な状態を積み重ねていけば、末永く活力に溢れた状態で幸せを感じながら生活できます。