先々の女子選手にも、両立する姿を見せたい

本人は意欲を示すが、もしも再び世界を渡り歩くとなれば、子育てとの両立はもっと難しくなってくる。長期間家を空けたり、子供の保育園の行事に参加できないなど、さまざまな問題が生じるからだ。

女子バレーボール日本代表のキャプテンを務める荒木絵里香選手(トヨタ車体)の場合は、実母が全面的に育児を請け負ってくれているため、数カ月にも及ぶ代表活動に参加し、時には海外遠征にも赴くことができる。それを岩清水選手など、他の、子供を持つ女性アスリートができるようになるのか……。今後の日本全体の課題と言っていいだろう。

「私のようなサッカー選手が、関東で試合に行くことを考えても、自宅を出て試合2時間前にスタジアムへ行って、2時間試合をこなし、すぐに帰宅したとしても6~7時間は拘束されることになります。泊まりの遠征になれば、それだけではすみません。親の助けを受けられる人はまだ可能性がありますが、それが難しく、夫の仕事も融通が利かないとなれば、キャリアを断念せざるを得なくなると思います。女性アスリートがプレーを続けながら育児ができるような託児所とか育児サポート体制を作っていかないと、なかなか後に続く人が出てこないのではないかという危惧はあります」
「それでも、自分は可能性を示したいですし、先々の女子選手のためにも、両立する姿を見せたいという気持ちが強い。私が少しでも道を切りひらけるようにしたいです」

9月に開幕するWEリーグは、岩清水選手のように結婚・出産を経てピッチに立つ選手や指導者、スタッフが数多く活躍する場所になってほしい。そのリーグでプロ選手として戦う彼女には先駆者として圧巻の存在感を示すことを強く願う。

出産後、練習に参加する岩清水選手
写真提供=東京ヴェルディ
出産後、練習に参加する岩清水選手

文=元川 悦子

岩清水 梓(いわしみず・あずさ)
サッカー選手(日テレ・東京ヴェルディベレーザ所属)

1986年、岩手県生まれ。小学校1年からサッカーを始め、1999年に同クラブの育成組織・メニーナ入りし、2003年にベレーザに昇格。2006年に日本代表デビューし、2008年北京・2012年ロンドンの両五輪、2011年・2015の両女子W杯など世界舞台で活躍。国際Aマッチ122試合出場11ゴールという実績を誇る。日テレでは2021年からは背番号を22から33へ変更。ポジションはDF(ディフェンダー)