リーダーも、相手に合わせた変化が必要
「リーダーシップ」も、研修でよく取り上げられるテーマ。今は、リーダーも相手に合わせて変化しなければいけない時代になっていると東明さんは言う。
「相手の価値観を把握し、一緒にモチベーションを上げる方法を考えるリーダーの方が成功しやすい。ただ、多くの会社や学校、スポーツのチームなどでは、下の人間がリーダーを選べない。上に立つ人間にも悩みはあります。異なる立場や考え方の双方が一番いい関係を構築し、成功する組織を作り上げていくような方法を模索していくことも重要です」
コロナ禍でリモートワークが増え、人と人の接点が減っており、それぞれの組織や在籍する人々の悩みもより多様化している。「そういった現状に即したアドバイスができるように、私自身もより一層、勉強していく必要があると感じています」
この1年間はコロナ禍の影響で研修や講演が減り、大学の授業もリモート中心になるなど、東明さんの仕事スタイルも大きく変わった。「経営的にも厳しかった」という。
しかし一方で、組織や女性の働き方、リーダーにまつわる問題は、世の中がどう変わっても、簡単に消えてなくならない。その解決策を、学生や顧客とともに探っていくことが、今の彼女に求められている。
アスリートは、ビジネスでもっと活躍できる
「現役引退後に就業し、活躍している元アスリートは数多くいると思います。ですが、自分が希望した仕事に就いている、あるいは仕事内容や条件に満足している人は少ないように感じます。個人的には、アスリートはビジネス界でもっとリーダーシップを取れる存在だと考えていますが、その多くが、スポーツで培った長所を活用しきれていないのが現状です」
東明さんは、「もともとアスリートは課題解決能力に優れていますが、課題発見・設定能力については少し不足している印象」と話す。「その部分をブラッシュアップして、仕事にうまくリンクできれば、より活躍の場が広がると確信しています」と力を込める。
「私の場合も『女子サッカーで五輪に出た』という過去は過去。『電通での挫折を完全払拭して“ビジネス界でも輝けるアスリート”を見せたい』という一心でここまでやってきました。その過程では、元上司やメンターなど支えてくれた方に助けていただきました。今はまだ道のりの途中。これからも自分なりに頑張っていきます」
東明さんの生きざまは、「女性アスリートはセカンドキャリアでも大いに輝ける」ことを示してくれている。彼女に続く人間が次々と出てきてくれることを、切に祈りたい。
文=元川 悦子
1972年生まれ、岐阜県出身。兄の影響で8歳からサッカーを始め、16歳で日本女子サッカーリーグ「プリマハムFCくノ一(現・伊賀FC)」入団。ポジションはDF(ディフェンダー)。日本女子代表としてアトランタ五輪、ワールドカップなど国際大会に多数出場。2000年引退。2001年に大阪教育大学教育学部修士課程を修了し、電通入社。日本サッカー協会からJFAアンバサダーに女性として初選出。2014年、順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科博士課程修了。2017年4月から関東学園大学経営学部経営学科准教授。