旦那のゆるゆるパンツを履き続けるワケ

【岩波】下着の締めつけがイヤだとか、そういうこだわりは今でもお持ちですか?

【沖田】はい。でもそれは健康のためだと考えるようにしています。自分の体のため、というルーティンにしたいなと。

今までは自分のこだわりでギッチギチだったんですけど、ストラテラ(ADHD患者に処方される代表的な薬)を飲んで、こだわりがゼロになったことがあって。

「こだわりって薬ひとつでなくなるものなんだ」と思って、一時的に青い服を半分ぐらい捨ててしまったことがあります。前は泣き叫ぶぐらい捨てるのがイヤだったのに、「あ、大丈夫なんだ」って。捨てたからといって自分が死ぬわけじゃないと、よくわかりました。

あと、予定が変更になるとパニックになるし、時間通りに人が来ないと私は死んでしまう、みたいな強迫観念もあったんですけど、それもなくなりました。

【岩波】いろいろな面で余裕が持てるようになってきた。

【沖田】旦那のパンツをはき続けることだけは、旦那が嫌がってますね。旦那がはかなくなったもうユルユルヨレヨレのパンツをはく。

新品はイヤ、気がつけば10年以上ということも

【岩波】自分用に、大きめのものを買おうとは思わないんですか?

【沖田】新品はイヤなんです。パリッとしてるのがイヤ、フニャフニャがいい。

【岩波】新品を何回も洗濯して、こなれ感を出したらいいんじゃないでしょうか。

岩波明『医者も親も気づかない 女子の発達障害』(青春出版社)
岩波明『医者も親も気づかない 女子の発達障害』(青春出版社)

【沖田】気がついたら10年以上はいてたことがあります。破けたタイミングでやっと捨てました。元彼のパンツです。桜壱さん(夫の桜壱バーゲンさん)と会う前だから、17年ぐらいはいてた。

これでも妥協して歩み寄ってるんです、私は。

それまで裸族だったから「はいてくれって言うからはいてるんだよ」と。ユルユルでもはいてるんだからいいでしょ。それに冬は一応ズボンをはくようになったんで、ノーブラノーパンでも見えない。だから冬は平和。

逆に夏は修羅場です。汗かくから、ふたりとも脱いで、いつも裸でウロチョロして。

【岩波】冷房をつけたらどうですか?

【沖田】ダメなんです。汗で肌着が張りつくのがイヤ。汗かいたらすぐに「イヤ! もうイヤ!」って脱いじゃう。

【岩波】それも、感覚過敏の症状かもしれないですね。

【沖田】ひとり暮らしをしてた頃は天国で、「裸族最高!」。服も買わなくていいし。

風俗の仕事に行くのに自転車に乗るときしか服着ないんです。店に着いたらすぐコスチュームに着替える。お金をまったく使いませんでした。

岩波 明(いわなみ・あきら)
精神科医、昭和大学附属烏山病院院長

1959(昭和34)年、神奈川県生まれ。東京大学医学部医学科卒。医学博士。発達障害の臨床、精神疾患の認知機能の研究などに従事。都立松沢病院、東大病院精神科などを経て、2012年より昭和大学医学部精神医学講座主任教授、2015年より昭和大学附属烏山病院長を兼務。著書に『発達障害』(文春新書)、『医者も親も気づかない 女子の発達障害』(青春新書)、『誤解だらけの発達障害』(宝島社新書)など多数。

沖田 ×華(おきた・ばっか)
漫画家

1979年、富山県出身。小学4年生のときに、医師よりLD(学習障害)とADHD(注意欠如多動性障害)、中学生のときにはアスペルガー症候群と診断される。2008年、漫画家デビュー。2018年、『透明なゆりかご』(講談社)で第42回講談社漫画賞(少女部門)受賞。主な作品に『毎日やらかしてます』(ぶんか社)、『お別れホスピタル』(小学館)など。