「汚い」「恥ずかしい」はNG

【村瀬】何も知らずに精通を経験すればショックを受けるでしょう。知っていれば「これがそうか」で済みます。

【太田】村瀬先生が漫画家のフクチマミさんと書かれた『おうち性教育はじめます』では、親が月経や射精について、どのように子どもに伝えるといいか、とても具体的にわかりやすく書いてあり参考になります。

フクチマミ、村瀬幸浩『おうち性教育はじめました』(KADOKAWA)より
フクチマミ、村瀬幸浩『おうち性教育はじめます』(KADOKAWA)より
フクチマミ、村瀬幸浩『おうち性教育はじめました』(KADOKAWA)より
フクチマミ、村瀬幸浩『おうち性教育はじめます』(KADOKAWA)より

【村瀬】本でも強調しましたが、子どもに伝えるときは、「汚い」「恥ずかしい」などの言葉は使わないように気を付けてほしいですね。自分の性や性器を、肯定的にとらえられなくなってしまいますから。

「淡々と」というのが大事です。何が起こっているかという事実や、「精液がついたパンツは、軽く洗って洗濯機に入れて」などの対処法を、淡々と伝えるといいですね。

【太田】うちの息子たちは漫画が好きなので、我が家では『おうち性教育はじめます』や『マンガでわかるオトコの子の「性」』を買っておいたら、上の息子は自分で興味を持って読んで理解したようです。書かれていることについて「クイズ出して」と言ってくるようになりました(笑)。

【村瀬】そりゃいいね。いい男になりますよ、きっと!

【太田】ありがとうございます。私はもともと、性についても恥ずかしがらずに話せる空気を作ろうと思っていたので、そこで親のほうが恥ずかしがったり、ニヤニヤモジモジしたりせず、わざとらしいくらい冷静に淡々とするようにしています。思春期になってからだとお互いに恥ずかしくなるでしょうが、今はまだ理科の教科書のようなものなので、お互いに淡々と話せるいい関係ができました。

もちろん、性教育で家庭が担うべきところは大きいのですが、本当は第三者に教えてほしいという部分もあります。「親からは聞きたくない」という子もいるでしょうし。

家庭だけ、学校だけで教えるのには限界があるように思います。

日本の性教育は「生殖」に関わる一部だけ

【村瀬】日本の学校での性教育は、生殖に関わるところだけをピックアップして教えています。月経も射精も、生殖という文脈でしか教えません。

【太田】でも月経は毎月あるものなので、女性の健康に関わりますよね。

【村瀬】月経は「お母さんになるための準備」と教えられますが、子どもを産まない人だっている。やたら生殖に関連付けすぎるんですね。

【太田】生殖だけでなく女性の健康管理という文脈でも教えられるといいと思います。自分の体のことなのに、よくわかっていないことが多いですし。

おうち性教育はじめます』にも出てきたエピソードですが、私も、結構な年齢になるまでクリトリスからおしっこが出ているのだと思っていました。尿道という言葉を知ったときに、「尿道ってどこにあるんだっけ?」と思って調べてみて、初めて知ったのですが、みんないつどうやって知ったのかな。

【村瀬】クリトリスという言葉さえ教えないので、そういう女性もきっとたくさんいると思います。クリトリスは、「快楽の性」にとってはきわめて重要ですが、生殖に直接関係しないので教えられることがない。これも大きな問題ですね。

【太田】クリトリスについて教えられないのは「生殖に関係ない」からですよね。生殖以外の観点での性教育が本当に乏しいんだと思わされます。