緊急時に命をつなぐ
国境なき医師団
特定非営利活動法人(国際協力NGO)

インドの医療従事者に安全対策をトレーニングする国境なき医師団のスタッフ。写真提供:国境なき医師団(cGarvit Nangia)
インドの医療従事者に安全対策をトレーニングする国境なき医師団のスタッフ。(写真提供:国境なき医師団©Garvit Nangia)

自然災害、紛争、感染症の流行などによる人命の危機に対して、「独立・中立・公平」な立場で医療・人道援助活動を行っているのが国境なき医師団だ。活動資金の大半を民間からの寄付でまかなうことにより、政治や権力からの影響を受けずに、医療ニーズがある世界中の現場へ駆けつけることができる。日本を含む世界38拠点に事務局を持ち、医師や看護師をはじめとするスタッフが約70の国と地域で援助活動を行う。

日本の窓口は、特定非営利活動法人国境なき医師団日本。広報部のベヒシュタイン紗良さんは、「私たちは国境が命の境目とならぬよう、緊急性の高い医療ニーズに応え、その国の政府やほかの援助機関が医療を提供できる環境が整ったら撤退する。“絆創膏ばんそうこう”のような存在」と話す。

安全な飲み水も医薬品も寄付がなければ届けられない

これまでの活動地の多くは、紛争や難民の多いアフリカや中東だったが、今や日本を含めた世界中が新型コロナウイルスの脅威にさらされている。世界各地で感染予防対策や治療にあたっているほか、今後ワクチンや治療薬ができたときに世界の誰にも適正な価格で届くよう、国際社会に呼びかけているという。

コンゴ民主共和国でははしかの流行と新型コロナウイルス感染症の二重苦となっている。写真提供:国境なき医師団(cMSF/CarolineThirion
コンゴ民主共和国でははしかの流行と新型コロナウイルス感染症の二重苦となっている。(写真提供:国境なき医師団©MSF/CarolineThirion)

「もともと衛生状態が悪く、医療体制も不十分な難民キャンプは、さらに危機的な状況に陥っています。また、内戦下にあるイエメンでは、入院患者の4割以上が亡くなるという時期もあり、“昨日まで元気だった人たちがバタバタ死んでいくのは見るに堪えない”という現地からの声も聞こえます」

緊急支援に備え、基本的には使途を指定せずに寄付を募っているが、新型コロナ対応のように支援対象を選択することも可能だ。医薬品も清潔な飲み水も、寄付がなければ届けることができない。寄付こそが難局を乗り越える力となる。