メタ認知をつかさどる脳

脳の中で、メタ認知をつかさどっているのは、前頭前野といわれるところです。前頭前野は、10代前半にかけてゆっくりと発達することがわかっており、その発達のダイナミクスと知能に関連があることも示されています。また私の研究からも、メタ認知が高い人では、学習に対する予測や判断が正しく、脳の前頭葉が発達していることが明らかになっています。

子育てをしているとついつい、「ちゃんと○○しなさいって言ったでしょ!」などと怒りがちですが、小学校低学年くらいまでの間は、その○○する、という方略を自分のものとして使いこなすメタ認知が発達しきっていないため、繰り返し伝えてあげることが必要なのです。そして、その繰り返しの上で、小学校高額年以降、自らの方略として使いこなせるようになっていることで、成績の伸びが見えてくることを期待しましょう。

<参考文献>
・ Larkin, S., 2010 Metacognition in Young Children, Routledge.
・ Larkin, S., 2007 A Phenomenological analysis of metamemory of 5-6-year-old children. Qualitative Research in Psychology, 4(4), 281-293
・ DeLoache, J., Cassidy, D., & Brown, A. 1985 Precursors of mnemonic strategies in very young children’s memory. Child Development, 56, 125-137
・ Fravell, J. H., Friedrichs, A. G., & Hoyt, J. D. 1970 Developmental changes in memorization processes. Cognitive Psychology, 1, 324-340 13)
・ Fravell, J. H. 1971 First discussant’s comments: What is memory development the development of? Human Development, 14, 272-278 14)
・ Hosoda, C., Tsujimoto, S., Tatekawa, M. et al. Plastic frontal pole cortex structure related to individual persistence for goal achievement. Commun Biol 3, 194,2020
・ Hosoda, C.Takashi Hanakawa,Manabu Honda, Kazuo Okanoya, Rieko Osu Brain become more plastic by the effective learning. Organization for Human Brain Mapping 2015

細田 千尋(ほそだ・ちひろ)
東北大学大学院情報科学研究科 加齢医学研究所認知行動脳科学研究分野准教授

内閣府Moonshot研究目標9プロジェクトマネージャー(わたしたちの子育て―child care commons―を実現するための情報基盤技術構築)。内閣府・文部科学省が決定した“破壊的イノベーション”創出につながる若手研究者育成支援事業T創発的研究支援)研究代表者。脳情報を利用した、子どもの非認知能力の育成法や親子のwell-being、大人の個別最適な学習法や行動変容法などについて研究を実施。