SNSでは旧姓併記が増加

少し前の記事だが、2015年のニューヨークタイムズの記事によると、アメリカでは一時、結婚後旧姓を使用し続ける女性が減ったが、近年また伸びているという。

この記事によると、1970年代には初婚の女性の17%が旧姓を使い続けたが、1980年代には14%に落ち込んだ。その後、1990年代にまた18%に上がったという。

グーグルの消費者調査によると、2000年代には約20%のアメリカ人女性が旧姓を使い続け、さらに10%の人が夫と2人の苗字をハイフンでつなげて使っているそうだ。最近は、フェイスブックやインスタグラムなどのソーシャルメディア上で、結婚したことを知らない昔の友人にも見つけてもらえるよう、自分のアカウント名に旧姓を併記する人が増えている。

日本では「夫婦別姓」が義務付けられていた時代も

実は、日本において夫婦同姓の歴史はまだ100年ぐらいなので、夫婦で1つの姓を使うのが日本の伝統だという主張はあたらない。法務省によると、明治9年(1876年)3月17日太政官指令では、妻の氏に関して、実家の氏を名乗らせることとし、「夫婦別氏」を国民すべてに適用することとなっていた。その後、明治31年(1898年)に民法(旧法)が成立し、「夫婦は、家を同じくすることにより、同じ氏を称することとされる」という夫婦同氏制が導入された。

これは、同一姓、同一戸籍制度だった当時のドイツの制度を参考にしたと言われている。ドイツでは夫婦どちらかの氏を選ばなければならず、決まらない場合は、夫の姓を名乗るという規定があった。しかし、そのドイツでさえ、これが女性差別的だとして、1993年には法律が改正され、現在は選択的夫婦別姓が可能になっている。

夫婦別姓、四半世紀にわたる議論

さて、日本では昨年2020年末、政府の「第5次男女共同参画基本計画」が決定した。しかし、焦点だった「選択的夫婦別姓制度」に関して、5年前の「第4次男女共同参画基本計画」にあった「選択的夫婦別氏」という文言が消え、代わりに「夫婦の氏に関する具体的な制度のあり方に関し、司法の判断も踏まえ、さらなる検討を進める」というぼかした表現になってしまった。

この議論は今後どうなるのだろう。政府はコロナ対策で忙しいということで、このまま進まず放置されるのであろうか。

夫婦別姓については、過去25年にわたり反対派と賛成派の議論が繰り広げられてきた経緯がある。1996年に法制審議会が選択的夫婦別姓制度の導入を答申したが、自民党の反対で法案の提出には至らなかった。また、2002年には、原則は同姓で別姓は例外とする「例外的夫婦別姓案」が法務省によって提出されたこともある。自民党では、9年前の野党時代、公約づくりの際にも議論されたが、今回はそれ以来の議論だった。