アルファロメオを33秒間に350台

DX先進国ともいえる中国では、さまざまな展開が起きていて、とても面白いです。たとえば、自動車の自動販売機があるのです。実は、現在の中国で最も自動車を販売しているディーラーはアリババグループなのです。

ECモールから始まったアリババグループは、中国IT業界どころか、世界を代表するほどの巨人となっていますが、まさか自動車まで……と思っていたら、売り方もさすがです。

須藤憲司『90日で成果をだすDX入門』(日本経済新聞出版社)
須藤憲司『90日で成果をだすDX入門』(日本経済新聞出版社)

アリババグループのサービスは単一のIDで管理していますから、ユーザーの特性も理解しています。見込みのある人に一斉に動画広告を打つ施策で、自動車のフラッシュセールを実施したところ、イタリアの高級車メーカーであるマセラティの自動車を18秒間に100台、アルファロメオを33秒間に350台販売した実績があるといいます。

さらに驚かされるのが、自動車の「自動販売機」。インターネットで試乗予約をしてから、立体駐車場のような店舗に向かいます。顔認証をパスすると、予約していた自動車のキーが得られて、試乗スタート。気に入れば、購入もスマートフォンアプリから決済できてしまいます。店舗には基本的にスタッフはおらず、まさに自動販売機(販売店?)です。

でも、実は何よりすごいのは、「このクルマが欲しい!」と思ったらスマートフォンから注文でき、それを即決で承認できるだけの社会的信用度が、あらかじめスコアリングされていることでしょう。注文した「誰か」が、それだけの高額決済に耐え得る存在かどうかわからなければ、おいそれと乗って帰せませんから。現在の日本では、真似をしようにもなかなか真似できない事例です。

須藤 憲司(すどう・けんじ)
Kaizen Platform 代表取締役

2003年に早稲田大学を卒業後、リクルートに入社。同社のマーケティング部門、新規事業開発部門を経て、リクルートマーケティングパートナーズにて執行役員として活躍。2013年にKaizen Platformを米国で創業。現在は日米2拠点で累計400社以上の国内外のDX戦略の立案と実行を支援。