飛沫の約8割が抑えられる
ここで、不織布のマスクを着けることで得られる効果についての、科学的な実験データをご紹介いたします。
理化学研究所と豊橋技術科学大学などの研究グループの共同研究データによれば、マスクを着けることで、くしゃみや咳などで出る飛沫の約8割が抑えられると報告されています。
マスクを着用していると人のことも自分のことも守ることができる
仮に、ウイルスを保有しているAさんと、保有していないBさんが向き合って会話をしていたとします。
Aさんがくしゃみをしても、唾液など大きな粒子である飛沫の8割は不織布マスクや布マスクのフィルターで止められます(人が密集していない状態で全員マスクを着けていれば、お互いの飛沫を防御し合い、吸い込みリスクが減ることになります。この状態を「ユニバーサルマスク」と表現します。こうした防御性の高い状態では、布マスクで充分とされます。密集の状態で使用するマスクは、不織布マスクをおすすめします)。
残り2割はマスクから飛び出し、1~2メートルほど周囲に飛びますが、粒子の大きさがあるので重力に引かれて下へ落ちます。AさんとBさんが2メートル以上離れていれば、飛沫はBさんにほとんど届きません。
飛沫よりも小さなウイルスや細菌などを含んだ粒子は、5~6割がマスクで抑えられ、残りの4~5割が周りの環境に広がっていきます。漏れ出した飛沫より小さな粒子約5割のさらに10%がBさんのほうへ漂ってきたとして、Bさんがホコリの半分をカットできる性能のマスクを着けていたとします。
この場合、Bさんが吸い込むAさん由来の飛沫よりも小さなウイルスや細菌を含んだ粒子は、最初にAさんから出た飛沫の2.5%になります。
双方がマスクを着けて距離をとれば、吸い込んでしまう飛沫や飛沫より小さな粒子の量はこんなに減るんですね。
また、新型コロナ感染症の場合は、症状が出る前に感染力が強い状態だ、ということがわかってきました。
人と同じ空間にいるときは、自分はウイルスを保有しているかもしれない、と思って、正しくマスクを着けてください。
労働衛生工学を専門とし、マスクやアスベスト等の粉じん対策で使用する呼吸用保護具研究に携わるマスク研究の第一人者。大阪府立大学大学院農学生命科学研究科(当時)修了後、食品添加物や原材料を扱う会社で細菌検査室研究員として勤務。その後、医療食品会社の衛生管理員や労働科学研究所の研究員、産業保健協会研究開発グループリーダーを経て、東京工業大学大学院博士後期課程を修了。2019年10月より現職に。内外からのマスク関係の問い合わせを一手に引き受けている。バラエティ番組『マツコの知らない世界』(TBS系)、情報番組『あさイチ』(NHK)にマスク研究家としても出演。