息子が共感力を身につける「適齢期」
もちろん、不可能じゃない。私はあきらめていない。だから、オトナ男子たちの軌道修正のために、『妻のトリセツ』を書いた。
オトナ女子たちに、夫の軌道修正を促すコツを書いた本、『夫のトリセツ』も出版されているので、夫婦関係を何とかしたければ、ぜひ二冊併せて、ご一読ください。
さて、この本のテーマは、息子の脳である。
実は、息子の脳については朗報がある。
男性脳は、とっさに「遠く」を見る、客観優先で生まれてくるが、思考スタイルがゴール指向問題解決型に強くフィックスするのは、思春期のころなのである。
それまでは、母の誘導によって、いとも簡単に、共感型対話も交わせる。
要は、13歳までに、母親と共感型対話の訓練ができていれば、自然に、ことばのエスコートができるようになるってことだ。
「ことばのエスコート」は母親が教えるしかない
なのに、なぜ、日本の男子はこれができないのだろう。
答えは簡単だ。この国の母たちが、息子相手に共感型の対話をしていないからだ。
さっきの会話を思い出してほしい。母と息子の会話になぞらえてみよう。
母「あ~、あんたも、ぐずぐずしてるからね」《問題点の指摘》
息子「……」
母「いやなら、やめちゃえば?」《問題解決》
母「あー、それは、つらいよねぇ。そこは、はっきり言っていいのでは?」《共感》
息子「うん、次はそうする」
母「がんばってね。あなたなら大丈夫」《承認》
日頃、どちらをやってますか?
案外、前者を使っているのではないだろうか。同じことを夫にされたら、けっこうムカつく会話を、つい息子と。
そうすると、息子が、ことばのエスコートができない夫となって、その妻がまた……この輪廻は、どこかで断ち切らないと、永遠に続いてしまう。
というのも、男子は、基本的に、母親から「ことばのエスコート」を教わらないと、他にチャンスがないからだ。男同士は、ゴール指向問題解決型で話をするからね。
1959年、長野県生まれ。人工知能研究者、脳科学コメンテイター、感性アナリスト、随筆家。奈良女子大学理学部物理学科卒業。コンピュータメーカーでAI(人工知能)開発に携わり、脳とことばの研究を始める。1991年に全国の原子力発電所で稼働した、“世界初”と言われた日本語対話型コンピュータを開発。また、AI分析の手法を用いて、世界初の語感分析法である「サブリミナル・インプレッション導出法」を開発し、マーケティングの世界に新境地を開拓した感性分析の第一人者。近著に『共感障害』(新潮社)、『人間のトリセツ~人工知能への手紙』(ちくま新書)、『妻のトリセツ』『夫のトリセツ』(講談社)など多数。