感謝を書き出すだけ、1週間で効果が現れる

その結果、感謝を5つ数えることが、ポジティブ気分や人生に対する肯定的な評価の向上、運動時間の長さ、体調不良(病院にかかる回数)やネガテイブな感情の想起の少なさにつながり、well-beingが向上したことを明らかにしました。また、別の研究からは、感謝をし幸福度が上がることで、作業効率や生産性が上がる可能性も示されています。

感謝を数え挙げてもらう期間は、1週間でも効果がみられ、毎日感謝を書き出すほうが効果がより高いものの、週末だけの週1回を10週間続けても効果が見られています。そしてこれは、健康な大人だけでなく、患者さんや、12歳程度の子供たちにおいても同じ効果を生むことが示されています。

「何とかなる」と考えられるようになる

なぜ感謝がwell-beingを高めるのでしょうか? 感謝しやすい人は、ほかの人から何か良いことをしてもらうと、そのことについて「自分のためにこんなことをしてくれた!」と、特別にその行為に価値を高く持ち、思い込みやすい特徴があることが挙げられています(これをスキーマバイアスと言います)。その結果、状況を肯定的に解釈して感謝するので、それがwell-beingにつながるとされています。また、感謝をしやすい人は、物事に対して楽観的に考える傾向があり、ストレッサーに対しても、なんとかなる、と楽観的に自分の中で処理することで、 結果としてwell-beingが上がるのではないかと言われています。

悲しい顔のほうではなく、スマイルマークのキューブを選択した手元
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感謝をすることで変化する脳

多くの人は、何かをしてもらうと感謝の気持ちが生まれ、お返しをしようという気持ちが高まります。これは、何かをしてくれた対象に対して感じるだけでなく、その感謝とは全然関係なかった別の他者に対しても、何か良いことをしてあげたいという利他的感情が高まります。

実際、3週間欠かさず、自分が感謝していることを毎日日記につけてもらい感謝の習慣をつけると、人は他者により協力的になり、人間関係を良好にするという結果が示されています。

面白いことに、感謝と利他的行動は、どちらも、脳の中の報酬系と言われる経路と密接に関係する部位(前頭前皮質腹内側部)の活動と関連しており、毎日感謝日記をつけ、感謝が習慣付くと、脳のこの部位の活動も上がることが明らかになっています。