金子恵美、強さの秘密

そして10月には、金子恵美氏がみそぎ感たっぷりの白く清純な装束で著書『許すチカラ』(集英社)を出版、「ああ、この人は腹が決まっている。ここからやるな」と、私は文化人タレントとしての金子恵美氏の独り勝ちを予感した。その頃、あるギョーカイ人が言ったものだ。「金子恵美は、“痛い”から強いんだよね」。その通りである。

そこに、謙介2回目のゲス不倫。ああ、もう。この夫婦がそんなもので折れるわけがないのだ。むしろ燃料や栄養剤注入みたいなものである。一層面白くなるに決まっているじゃないか(ムダに縦横整然と書かれた謙介の担当弁護士からの回答書に何か仕掛けがあるのではないかと、思わず縦読みしたのはここだけの話である)。そしてやはり、この2人は面白かったのだ!

二人は即、同じテレビ番組に夫婦で出演。謙介は殊勝そうに謝罪の弁を口にし、だけど完全に「反省してないでしょ」といじられるキャラとして役割を果たした。金子恵美氏は「離婚はしません」「監督不行き届きだった私自身も悪かった」と気丈で賢い妻としての姿を貫き、しかも一度ならず二度のこの事態を招いた文春に対して「『文春』さんには引き続き、3度ないように監視し続けていただきたい」とコメントする、圧巻の余裕まで見せたのだ。

見事なスキャンダル返し芸

痛い。だから強い! 金子・宮崎夫婦はスキャンダル返し芸を確立したと思うのである。

私は、この先の二人の姿に、ジャンルは違えど故・樹木希林と内田裕也夫妻に似たかげろうを見た。悔しいけれど、もう二人でどこまでも面白くなっちゃえばいい。行くところまで行って、新しい時代の文化人夫婦の姿を見せてほしい。

金子恵美氏は、2度目の文春砲によって、ワイドショーやバラエティーのコメンテーターとしていまや最強の立場まで押し上げられてしまった。うぬぬ文春、余計なことをしてくれおって……。なぜ金子恵美氏にこれほど私がこだわるのか。本当の本当を言うと、金子氏と同じ朝の情報番組に時々ちょこっとだけ出してもらう立場の私、金子氏があまりに人気だわコンテンツとして強いわで、「ああ、どうせアタシが出ても『なんだ、今日は金子恵美じゃないじゃん』『三浦瑠麗じゃないじゃん』って視聴者にガッカリされるんだ……」と、見当違いにクヨクヨ(×2)心に病み、酒をあおる日々だからなのである。

編集さん「河崎さんの怨念が凄くて引きます……。大丈夫ですよ河崎さん、そことは競合してませんから」

河崎「えっ(心外)」

編集さん「ぶっちゃけ、競合させてもらえてません」

河崎「マジで(極めて遺憾)」

河崎 環(かわさき・たまき)
コラムニスト

1973年、京都府生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業。時事、カルチャー、政治経済、子育て・教育など多くの分野で執筆中。著書に『オタク中年女子のすすめ』『女子の生き様は顔に出る』ほか。