Z世代の新しいニーズ②「新タブー」

今回ご紹介するもう一つのニーズは「新タブー」です。これまでの日本社会でタブー(禁忌)とされてきた価値観や事柄の中で、最近、Z世代の間でタブーではなくなってきたモノやコトを指します。

ツイッターでちょっと不適切な発言をしただけで、一般人でさえ容易に炎上する時代になり、世の中が不寛容になっているように見えます。しかし、実はタブー自体は、Z世代の間では徐々に減ってきています。ただし、まだタブーとして残っている事柄に触れてしまった人には制裁が下され、徹底的に叩かれる、という構造になっています。

①「無性限」

小学生のお子さんのいる親御さんはご存知だと思いますが、この数年、「うんこ」がブームになっています。『うんこドリル』シリーズの大ヒット、お台場には「うんこミュージアム」がオープンして大人気です。

原田曜平「Z世代」
原田曜平『Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?』(光文社新書)

私もこのミュージアムに行きましたが、便座に座って写真を撮ってもらったり、カラフルなウンチがもらえたり、でっかい声で「うんこー」と叫ぶアトラクションがあったり、すごい時代になったものだと驚きました。

どんな客層が来ているかを観察してみると、意外にZ世代の若者が多く、さすがにデートでは少し来にくいのか、女子同士の姿を多く目撃しました。

インスタグラム上にはカラフルなうんこを持ったZ世代女子の写真がたくさん投稿されており、日本のタブーが大きく変化したことを強く実感します。

この「うんこ」のように、それまでタブーだった価値観やモノが、むしろ「消費の対象」になるという現象が、今、Z世代の間で広がってきています。

②「死考」

これまで「死」は、日本社会では大きなタブーの一つでした。しかし、「うんこ」同様、Z世代の間では、「死」をテーマにした展覧会がヒットしたり、「死」をテーマにしたコンテンツが大きな話題を呼んだりしています。

こうした「死」に関するモノやイベントをSNSに投稿することで、自分の哲学的な一面、あるいは普段と異なる自分の二面性を周りにアピールすることができる点が、Z世代にウケている理由のようです。

このように「死」がファッション化された現象を「死考」と命名しました。

「新切り口」と「新タブー」、Z世代特有のニーズを2つご理解いただけたのではないでしょうか。

原田 曜平(はらだ・ようへい)
マーケティングアナリスト、芝浦工業大学教授

1977年東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダーを経て、現在はマーケティングアナリスト。2022年より芝浦工業大学教授に就任。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。主な著作に『ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体』(幻冬舎新書)、『パリピ経済 パーティーピープルが経済を動かす』(新潮新書)、『Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?』(光文社新書)、『寡欲都市TOKYO』(角川新書)、『Z世代に学ぶ超バズテク図鑑』(PHP研究所)などがある。