「支援型リーダーシップ」への大誤解
なぜCさんは主体的に企画を進めることができなかったのでしょうか。
じつは支援型は誤解を生みやすいのです。
常に、リーダーが部下の補佐に回るのがいいわけではないのです。
支援型であっても、時に先頭に立って部下を主導する必要があるのです。
たとえば、「来年度の商品ラインナップの企画書をつくって」と漠然と指示するのではなく、「東京オリンピックと結びつく商品」「エコに基づく商品」など大枠を示して指示するのです。
Cさんにとって主体的に動くのは初めてなので、「大枠はこうで……」という指示をつけるべきなのです。
また、仮にCさんがうまくいかない場合、仕事を取り上げます。リーダーは部下の仕事を奪ってはモチベーションを落としてしまうと感じるかもしれません。部下が主体的に進められないのなら、「(○)この仕事はCさんに任せるのはまだ早いな。私が仕切るから、言ったとおりに動いてくれればいいよ」と奪うのもありです。
ただし、その際はきちんと説明することが条件です。リーダーが主導で動き、部下に補佐をしてもらいながら、再度、時間をあけずに、主体的に動くチャンスを与えます。
決して仕事を奪ったままにしないことが重要です。仕事を取り上げるのは一定の期間です。
同じ仕事でも主導役と補佐役によって見える景色が異なり、立場を変えることで仕事のヒントが見つかります。
部下が主体となって動く場合は、しっかり支援していけばいいのです。一見、荒療治のように見えますが、全面的に任せるより、部下の成長スピードは加速していきます。
優秀な部下には「助走期間」を設ける
優秀なプレイヤーがリーダーになって苦労している話をよく耳にします。
プレイヤーとリーダーは仕事内容が全く違うわけですから、一からのスタートです。苦労するのは仕方ありません。
そこでプレイヤーからリーダーに昇格したときにスムーズに仕事を移行できるように、次世代リーダー候補の部下にはマネジャーになる前の「助走期間」を設けておくといいのです。非公式なナンバー2、マネジャー補佐のような仕事を昇格前に経験してもらうのです。
たとえば、経営会議の資料を一緒に作成したり、あるいは管理職の会議に同席させたりなど、自分のやっている仕事の一部を教えて、手伝ってもらうことです。業務をあらかじめ覚えておくことで、リーダーに昇格した後も、仕事がスムーズにできるようになるでしょうし、俯瞰的な視点で仕事を見られるようになるメリットもあります。
しかし、それ以上にお願いしたいのが人材育成です。リーダーに昇格して一番苦労するのが人材育成だからです。エースプレイヤーである次世代候補のリーダーは優秀ですから、部下に対して「なぜこんな簡単なことができないのだろう」などと葛藤することも多いでしょう。その疑似体験として人材育成をしておくのです。