仕事に家事に忙しいビジネスパーソンの中では、6時間睡眠は日常という人も多い。しかし、ある研究では、6時間睡眠が常態化している人は、酒気帯び時の認知レベルになっている可能性があることが指摘されている。さらに栄養睡眠カウンセラー協会代表の前野博之氏は、「本人がそのことに気づいていないことが問題」と指摘する——。

※本稿は前野博之『成功する人ほどよく寝ている』(講談社+α新書)の一部を再編集したものです。

不眠症に苦しむ眠れない若い女性が手で目を覆う
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6時間睡眠の人は、自分の集中力低下に気づかない

睡眠不足や睡眠の質の悪さは、あなたの健康やビジネスにおいて、さまざまなリスクを上昇させる。それでは睡眠を改善すると、どのようなメリットがあるのだろうか?

睡眠不足と集中力の関係について、ペンシルベニア大学で一般の男女48人を対象に調査したデータが発表された(カリフォルニア大教授ウォーカー博士の『睡眠こそ最強の解決策である』から、デーヴィッド・ディンゲス博士の論文にあたった)。

8時間睡眠、6時間睡眠、4時間睡眠をそれぞれ14日間続ける3つのグループと、3日間で睡眠時間なしのグループで、パソコンの簡単な作業をしてもらい、集中力が途切れて起きたミスの回数を計測した。

結果は、8時間睡眠のグループはミスが少なく、14日間にわたりほぼ完璧だったのに対し、睡眠時間なしのグループは24時間時点でミスの回数が400%増加した。その後、4時間睡眠グループは6日後にミスが400%増加し、6時間睡眠グループは10日後にミスが400%増加した。

ビジネスパーソンにとって、6時間睡眠は普通だと思っている人が多いと思う。しかし、10日間続けるだけで24時間眠っていないグループと同じレベルに集中力が低下してしまう。さらに問題は、24時間眠っていないと強い眠気を感じるが、6時間睡眠グループは眠気をあまり感じず、自らの集中力の低下にもほとんど気づいていなかったということだ。

これほど集中力が下がっているのに、それに気づかず仕事をこなしている現状を知ってほしい。逆に、6時間睡眠を8時間睡眠に改善するだけで、驚くような集中力の向上が期待できるのだ。

睡眠6時間は酒気帯び認知レベル

睡眠をとらないと認知能力がどのくらい影響を受けるのかを調べたところ、24時間寝ていないと、血中アルコール濃度0.1%と同程度まで認知能力が低下するという結果がオーストラリアの研究機関から報告された。日本の酒気帯び運転の取り締まりは0.03%以上からで、徹夜をすると酒気帯び運転取り締まりの3倍以上の濃度で認知能力が低下してしまうのである。

ペンシルベニア大学の別の研究でも、6時間睡眠を2週間続けると24時間寝ていないのと同じレベルにミスが増加していた。ということは、慢性的に睡眠時間が6時間の人は、血中アルコール濃度が0.1%程度の認知能力に低下している可能性があり、それは体重60kgの人がウイスキーをショットグラスに4杯飲んだのと同じレベルなのだ。6時間睡眠が常態化している人は、早急に睡眠時間を確保し、本来のパフォーマンスを取り戻していただきたい。

全米自動車協会(AAA)交通安全財団が、約2年間にわたり7000人ほどのドライバーを対象に交通事故の原因調査を行い、2016年に結果を発表した。それによると、7時間睡眠と比較し、睡眠時間が4時間以下になると、交通事故を起こす危険は11.5倍になると発表されている。

睡眠不足の状態で運転するというのは、飲酒運転をやっているのと変わらない。逆に睡眠時間を改善するだけで、大幅に交通事故のリスクを下げることができるのだ。