さらに、日本を含む西太平洋地域の年間平均飲酒量の推移(2000年→2016年)を見てみると、オーストラリアやニュージーランドは減少しているが、日本は増えていることが判明した(図表2)。
加えて、最近はコロナ禍の影響により、アルコールとの付き合い方が変化したといわれている。日本アルコール関連問題学会は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、ネットを介した新しい飲み会のスタイルが普及したほか、不況による経済不安や、ステイホームによる孤独感を紛らわせるための手段として飲酒量が増え、その結果、飲酒問題が生じることを懸念している。
多量飲酒は、心身のほか家庭や仕事にも影響する
では、飲酒量が増えると、どのような問題が起こるのだろうか。
WHOによると、アルコール消費による死亡者数は300万人で、結核やHIV/AIDS、糖尿病の死亡者数を上回っている(※2)。
※2 WHO. 2018 Global Status Report on Alcohol and Health.
さらに、過度な飲酒は「出生前・乳幼児期」「少年期・青年期」「成年期以降」のすべての年代において、さまざまな心身の障害の原因となるだけでなく、暴力や飲酒運転といった社会的問題のほか、夫婦の不和や児童虐待などの結婚・家庭問題、そして失職や事故などの職業上の問題など、さまざまな問題を引き起こすことがわかっている(図表3)。
なかでも、「アルコール依存症」は多量の飲酒を続けることで脳に障害が起き、自分の意思で飲酒の量や時間、状況をコントロールできなくなる病気で、習慣的に飲酒をする人なら誰でもなりうるもの。さらに、自分では気づかないうちに進行するのが特徴だという。
日常的に飲酒を続けていると、少しずつ飲酒量が増え、しばしば多量飲酒による記憶障害が生じるようになる。さらに症状が進むと、飲みたい気持ちが抑えられなくなり、飲酒量が増えて心身に悪影響を及ぼし、仕事や家庭にまで支障をきたす。加えて、アルコール依存症は本人が病気と認めたがらないケースが多く、治療や相談につながりにくいという問題もある。