感染症で開催が危ぶまれたオリンピックも

第18回の東京(1964)/第31回のリオ(2016):最後に、今回の東京2020同様、感染症で開催が危ぶまれたオリンピックを紹介します。

実は過去にも、オリンピック直前に感染症が流行し、開催が危ぶまれた大会が2回ありました。1964年の東京オリンピックと、2016年のリオオリンピックです。

東京オリンピックは1964年10月より開催予定でしたが、その直前の6月に日本で集団赤痢が発生し、さらに8月にはコレラ患者が発生。日本中が大いにあわてましたが、政府の行動は迅速でした。政府は東京港と羽田空港の従業員、付近住民、接客業従業員など18万人以上にコレラと天然痘の予防接種を行うと同時に、赤痢対策として関係者32万人の検便も行い、何とか蔓延を防いだうえで開催にこぎつけました。

また前回大会にあたるリオオリンピックでも、開催直前にブラジルを含む中南米でジカ熱が流行しましたが、WHO(世界保健機関)が緊急事態を宣言し、IOC(国際オリンピック委員会)と協力し、中南米の感染症対策を徹底したおかげで、無事開催することができました。

さらに夏季オリンピックではありませんが、2010年の第21回冬季バンクーバーオリンピックの開催時期は、ちょうど新型インフルエンザの世界的大流行時でしたが、開催前にワクチンが開発されたため、開催できました。

2020年9月、IOCのコーツ副会長はAFP通信のインタビューに対し、「2021年の東京オリンピックは、新型コロナが完全終息していなくても開催する」と述べました。果たしてどうなるのでしょう。日本にとっては、確実に開催して低迷する経済を回復させたいところですが……。

写真=iStock.com

蔭山 克秀(かげやま・かつひで)
代々木ゼミナール公民科講師

「現代社会」「政治・経済」「倫理」を指導。3科目のすべての授業が「代ゼミサテライン(衛星放送授業)」として全国に配信。日常生活にまで落とし込んだ解説のおもしろさで人気。『経済学の名著50冊が1冊でざっと学べる』(KADOKAWA)など著書多数。