中国人の家庭の多くでは、3カ国語を一度に学ばせている

筆者はシンガポールで子供を欧米系のインターナショナルスクールに入れています。8月で学年を区切るために、日本よりも1学年繰り上がり、小学生になりましたが、英語の読み書きに苦労をしています。英語の場合、日本語のひらがなと違って、例外的な読み書きをする単語が多くあります。学校では単語カードなども持たせてくれるのですが、発音のためにマニアックな単語も多く、辞書で引いても出てこないような単語もあって、苦戦しています。当然、親がネイティブではないと学校では不利です。

しかし、娘が入っているELL(English Language Learner)という英語サポートクラスには、アメリカ人など英語ネイティブスピーカーの子もいて驚かされました。母国語なので喋ることができても、低年齢だと読み書きができない生徒も多いよう。ELLは想像以上にアジア人が少なく、中国や韓国の生徒などの姿はあまりありません。学校では中国と英語を学ぶので、韓国人や日本人の場合、両方とも母国語ではないのでどう考えても不利です。

両親ともに中国人や韓国人の家庭に英語の教育をどうしているか聞いたところ、学校の外でも英語の読み書きを習わせていると言います。シンガポールに来ている中国や韓国、インドの親はエリートが多く、両親共にアメリカの大学で大学院まで出ていて、英語が堪能なカップルも多いです。インド人の親などはボーディングスクールを出ている人も。中国から母子留学で来ていてELLに入っている生徒もいますが、英語の家庭教師などをつけて必死に授業にキャッチアップしています。

中国人の家庭の多くでは英語とスペイン語を学校で学ばせ、家では中国語を教えているようです。「3カ国語を一度にやるのは大変ではないか」と聞いても、絶対に学ばせたいし、子供も興味があるからと強い熱意で言うので感心をしました。中国語の授業の際も熱心に授業に参加しているのはインド系などアジア人で、欧米人は苦手意識が高いようです。

小学校入学前に英語の文章が書けないとダメ

新型コロナの影響で、祖国に帰る欧米人が多く、シンガポールのインター校の生徒の割合はアジア人が高くなっています。中国やインドからの生徒の割合が上がり、授業のレベルが押し上げられます。実際に中国の親などは授業のレベルを上げてほしいと学校側に要求をするためにカリキュラムが前倒しになる傾向があるようです。

日本では小学校1年生でひらがなを学び、算数は足し算などをしますが、シンガポールではインター校でも小学校1年生で英語の文章をかけ、簡単な本が自分で読めるようにならなければなりません。ローカル校だと、さらに1年早いようで、小学校入学前に英語でセンテンスが書け、中国語も学び、小学校ではタイピングをするようです。子供用のキーボードを探していると友人は言っていました。友人は図書館が開けるほどの児童書やDVDなどを買っているのですが、毎日読み聞かせ続けた結果、ある日子供が自分で英語の本を読めるようになったと言います。

また、学校では学力テストが多く、学年でのレベルに満たない場合は英語や算数で特別なサポートを受ける形になります。小学校の新学期が始まってすぐに英語、算数などのテストをするために授業スピードが早いです。様子を見るということもなく、できることをなるだけ早くやるようです。家庭のサポートも容赦なくリクエストしてくるので、毎日20分程度は子供の勉強のサポートをしています。

中華圏の子供たちは習い事も多くさせていて、週6などで予定が入っている子供も多いです。集合住宅で外遊びをしているのは欧米人やインド人がほとんどだと感じます。その他の子供たち(主に中華系)は習い事や塾などでしょうか。最近は、同じ集合住宅の中国人の子供と放課後に遊ぶ習慣ができたのですが、勉強は得意でもなんとなく運動は苦手そうに感じます。少し走るとむせたりするようです。スポーツや文化的な活動に関しては欧米や日本の教育に分がありそうです。しかし、学力は驚異的なものがあるために、将来、大学受験の際に彼らと競争をしなければならないとなると、先が思いやられます。

欧米の教育と中華圏の教育と、どちらも極端な部分があります。真ん中くらいがよいと感じる家庭も多いようでそれに合わせた教育を提供する教育機関も見受けられます。子供の個性に合った教育機関を各家庭で慎重に探す時代になっているのかもしれません。

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花輪 陽子(はなわ・ようこ)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士

外資系投資銀行を経てFPとして独立。2015年からシンガポールに移住。『少子高齢化でも老後不安ゼロ シンガポールで見た日本の未来理想図』など著書多数。