まずは電話で「相談」を

ところが先日、今年4~6月のオンライン診療や電話診療の内訳が公表されたのですが、上位3位までが風邪やコロナの症状である発熱、上気道炎、気管支炎でした。例えばこのうち発熱への対応については、薬を出して自宅で様子を見るよう診断したケースも多くありました。本当は新型コロナの可能性があるのに、オンラインや電話でこうした診断を受け、検査を受けないまま安心してしまった患者さんがいるかもしれません。でも、電話やオンラインでは、コロナかどうかの診断はできません。

厚生労働省は9月4日に、冬の新型コロナウイルスとインフルエンザ同時流行に備えて、発熱などの症状がある患者が受診する際の手続きを変更すると発表しました。まずはかかりつけ医や身近な医療機関に電話で相談し、検査や診療ができる医療機関を紹介してもらうことになっています。発熱などの症状がある場合は、こうした仕組みをうまく使い、対面で診察や検査を受けるようにしてください。

Withコロナ時代の今こそ「賢い患者」を目指す

インターネットは、特にコロナ禍で行動が制限される中では、上手に利用すればとても便利です。だからといって、なんでもすぐに飛びついてしまうのは危険です。ネットを見ると、コロナ禍でのオンライン診療の規制緩和に便乗し、「コロナ太りに最適」などとして、ほかの病気の治療薬をダイエット目的に処方する医師が増えているようです。

特に医療では、医師と患者の双方が、お互いが持つ情報を丁寧に共有することが必要です。信頼性の低い情報やサービスに飛びついたりすることがないよう、気を付けてほしいと思います。

私が理事長を務めるCOMLでは「賢い患者になりましょう」を合言葉にしてきました。「賢い患者」というのは、単に知識をたくさん詰め込んだ患者という意味ではありません。自立した高い意識を持った患者というイメージで、「医師や看護師などの医療者の説明を理解する努力をする」「自分はどんな医療を受けたいかを考え、それを言葉にして伝える」「自分にできる努力をして、医療者とコミュニケーションを取りながら協働する」などと表現しています。患者と医療者にとって重要なのは、コミュニケーションなのです。

コロナ禍は、多くの人にとって、医療機関との付き合い方について、考える機会になったと思います。ウイルス感染への不安はぬぐえませんが、みなさんもぜひ「賢い患者」になっていただきたいと願っています。

構成=井上 梢

山口 育子(やまぐち・いくこ)
認定NPOささえあい医療人権センターCOML理事長

1965年生まれ。90年に卵巣がんを発症し、約1年半治療を受ける。91年にCOML創始者辻本好子氏と出会い、COMLスタッフに。2011年から理事長を務める。著書に『賢い患者』。