2012年に東証マザーズ上場、その2年後の2014年には東証一部上場を果たした。その後、M&Aなどにより事業領域を積極的に広げている。
画像提供=株式会社ユーグレナ
2012年に東証マザーズ上場、その2年後の2014年には東証一部上場を果たした。その後、M&Aなどにより事業領域を積極的に広げている。

経営者として人間的に成長するには

最初に『論語』へ導いてくださったのは、SBIホールディングスCEOの北尾吉孝さんです。バイオ燃料などユーグレナ事業のことで相談に行ったところ、前例がないビジネスなので、新しい歴史をつくっていく気概で頑張りなさいと、激励してもらいました。そのときに、経営者としての不安な心情を打ち明けたら、人間力を高めるために漢学者・安岡正篤氏の教え、いわゆる「安岡教学」を学ぶのがいい、とアドバイスしてくださった。北尾さんの著書『実践版 安岡正篤』などを参考に、安岡正篤氏の解説を手がかりにして、『論語』を学び出したのです。

それから数年ほど経った頃でしょうか、大学の先輩で人材ビジネスをしている縄文アソシエイツ代表取締役の古田英明さんから、経営者が集まる『論語』の勉強会に来ませんか、とお誘いをいただきました。聞くと、講師は私が師と仰いでいる安岡正篤さんの孫、安岡定子先生だというではありませんか。

『論語』の勉強会では、安岡定子先生の指導のもと素読をし、そのあと初学者にもわかるように解説してくださいます。その話を聞いて、考え方や仕事のエピソードなどを経営者同士が率直に話し合う。そういうやりとりをしていくなかで、ビジネスに役に立つ『論語』の考え方が、自然と頭の中に入っていくのです。

ただ、『論語』は学んですぐに効果が出るものではありません。いざというとき、たとえば今回のコロナショックや大事な決断をしなければならいときになって、ふと『論語』の言葉に思いが及ぶのです。すると、考え方が整理され、進むべき方向性が見えてきます。現代にも通用する普遍的価値観が詰まった古典、私の場合は勉強会のテキスト『仮名論語』をいつも身近に置いているのは、そのためです。

もう一つの心の支えは坐禅

30歳そこそこ、若手経営者として心が揺らいでいたときに、出会ったもう一つが「坐禅」です。何か心のよりどころになるものを持つようにしたほうがいいと、ある方に上野谷中の全生庵・平井正修住職を紹介してもらいました。政界・財界人も多く参禅している、山岡鉄舟ゆかりの由緒ある禅寺。分不相応かなと思っていたのですが、平井正修住職には、快く迎えていただきました。それ以来、M&Aなど社として大事なことがあるときには、全生庵で坐禅をし、気持ちを整えています。

最近は海外の若手経営者ともビジネスのやりとりをする機会が増えましたが、彼らのなかでマインドフルネスが浸透していて、禅や坐禅の話で盛り上がり、打ち合わせがスムーズにいくことがあります。これも坐禅の効用ですね。

ところで、この全生庵で安岡定子先生が「谷中寺子屋」と称して、「おやこでたのしむ 『こども論語&坐禅』」教室の講師もされているのですが、そのことまでは知りませんでした。あるとき、平井住職から、「出雲さん、最近『論語』頑張っているらしいね」と言われたのです。どうしてご存じなのですかと聞いてみると、ここで教室をしている安岡定子先生が、「経営者の勉強会にユーグレナの社長さんが入門してきて、熱心に勉強されている」とおっしゃっていた、というのです。

『論語』と坐禅。それが安岡定子先生と平井正修住職を通して、私のなかでつながったのです。人の縁とはありがたいものです。