介護離職はお金の面でも避けたい
介護給付金があるとはいえ、収入が減るのは好ましくありません。しかし、ここで知っておいてほしいのは、「介護離職をするよりは、間違いなく家計への影響は抑えられる」ということです。
介護離職すれば収入がなくなりますし、厚生年金から国民年金に移行して将来の年金が少なくなるといった影響も生じます。シングルの人が介護離職した場合、親の年金で生活できたとしても、親が亡くなれば年金の支給もなくなります。もちろん、再就職することは可能だと思いますが、できれば、仕事を続けながら、介護を両立させる方法を考えるのが望ましいと言えます。
仕事は続けてサービスにお金を払うという選択肢も
とはいえ、誰かが介護にあたらなければ……、と思い詰めてしまいがちですし、自分がみてあげたいと考える人もいるでしょう。
まずは落ち着いて、公的介護保険のサービスの利用を検討しましょう。受けられるサービスの内容や限度額は要介護度によって異なりますが、限度内であれば自己負担は所得により1~3割です。限度額内では足りないという場合には、全額自己負担のサービスもあります。
費用は介護を必要とする本人が負担するのが原則ですが、親では負担しきれない場合、子が無理をして負担する、負担できないから介護離職して介護する、というのは避けたいところです。介護休業をしてケアマネージャーや兄弟姉妹で話し合う、近くに住む親せきや近所の人にも力を借りるなど、あらゆる方法を考えましょう。サービスの利用料を負担しても、長い目で考えると、介護離職をするよりは合理的な選択になる可能性が高いと考えられます。
家族が遠くで暮らしている場合は仕事を辞めざるを得ないと思いがちですが、どんな方法があるか、家族が元気なうちに話し合っておくことが大切です。東京で働いていた人が、地方で暮らすご両親の介護が必要になり、地方で仕事をみつけて転職した、という例もあります。ご自身の場合はどんな方法があるか、事前に考えてみましょう。
休業できる、休業しても不利益にならないように定められている、給付もあるなど、ここまで法律で定められているのは、介護離職する人を減らしたい、というメッセージです。まずは利用できる制度を知って、少し休業して、落ち着いて考えてくださいね。
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関西大学卒業。社会保険労務士。国民年金基金連合会理事。『大図解 届け出だけでもらえるお金』(プレジデント社)、『一般論はもういいので、私の老後のお金「答え」をください 増補改訂版』(日経BP)、『残念な介護 楽になる介護』(日経プレミアシリーズ)、『私がお金で困らないためには今から何をすればいいですか?』(日本実業出版社)など著書多数。