【悩み3】オンライン化に抵抗する人がいる
「オンラインでは話にならない」と会議に参加しようとしないメンバーがいます。仕事ができるベテランの社員だけに無視するわけにもいきません。そんな人には、どのように参加してもらったらよいでしょうか。
【解決策1】得を説くより損を訴える
オンライン会議に限らず、何か新しいことを始めようとすると、不利益を被る人から反発をくらいます。抵抗、サボタージュ、抜け道探し、骨抜きなど、ありとあらゆる手を繰り出してきます。人は、得をすることよりも、損をすることを嫌うからです。
会議も仕事であり、業務命令で強制的に参加させることは可能です。しかしながら、仏頂面をされたり、ぶち壊しの発言をされては、かえって迷惑になります。強権発動は本人のためにもチームのためにもなりません。
最初は、オブザーバー参加で十分だと思います。それも強制ではなく自己判断で。「是非参加してほしいが、煩わしければ見ているだけでよい」と促してみてはどうでしょうか。
そのときは、得を掲げるよりは、損を訴えるようにします。「参加しないと状況が分からなくなる」「連携が取りづらくなる」といったように。加えて「今後はすべてオンラインでやります」と言い切って、現状を維持することの損を理解してもらいます。
それでも参加しないかもしれません。そのときは事前に意見を聞いておいて当日議題に上げるか、ビジネスチャットや共有ファイルに入れておいてもらうのでもいいでしょう。
それでも、まったく参加しないよりははるかにマシです。
そうしながら、諦めず何度も扉をノックすることです。いくら拒絶されても、こちらはいつでも受け入れる用意があることを伝えるのです。人は、本気で関わってくれる人には応えようとしますので。
【解決策2】フット・イン・ザ・ドアでそそのかす
同時に、変化への恐怖や不安を取り除くことも大切です。オンライン会議で多いのはITリテラシーの話です。使い方が分からないとか、操作に慣れないとか。
その場合は、個人指導をしたり練習会を設ける必要があります。オンライン飲み会をやって抵抗感を払しょくするのもひとつの方法です。相互理解にも役に立ちます。
そんな努力が実り、ログインしてくれたらしめたもの。あとは、少しずつそそのかしていきましょう。
「皆さんに挨拶を」「感想を一言」「コメントを下さい」「追加情報はないですか」と段階を踏んで、発言を引き出すところまで持っていくのです。フット・イン・ザ・ドアと呼ばれるテクニックです。
人は、できるだけ一貫性を保とうとします。そのほうが人格的に完成しており、コロコロ変わるのは未熟な証だと考えるからです。ベテラン社員ならなおさらです。
それを逆手に取ったのがこの方法です。最初に、小さな要求を承諾してもらい、それから少しずつ大きな頼み事をして、最後に本当にのませたかった要求を持ち出すのです。会議でも役に立ち、覚えておくと重宝します。
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神戸市生まれ。大阪大学大学院工学研究科修了。大手精密機器メーカーにて商品開発や経営企画に従事。2003年「日本ファシリテーション協会」を設立。関西大学、法政大学、近畿大学で非常勤講師を務める。現在、堀公俊事務所代表、組織コンサルタント、日本ファシリテーション協会フェロー。