「ドレスコードはヨーロッパ貴族のマナーとして発達しました。服装で知性と教養、そして相手への敬意を表現したのです。それは現代のビジネスにおいては戦略のひとつとなります。服装で信頼感を与えれば、企業のイメージアップや良好なコミュニケーションにもつながるでしょう。また自分を効果的に表現し、仕事人生を成功に導くためのツールとしても有効。ファッションで好感度と存在感を高めることは個人のブランディングにも結びつくのです」

また、パーソナルスタイリストの創始者、政近準子さんはこう語る。

「ドレスコードの歴史からひもといてみましょう。18世紀、フランス革命が起こり、身分格差の激しい社交界にも民主主義の風が吹き始めます。そこでまず統一されたのが服装。ドレスコードを守れば、皆同じ身分に見える。『すべての人を平等に扱い、同様にチャンスを与える』。それが事の始まりなのです」

となると日本人は、ドレスコードへの理解が浅いのかもしれない。

「恥をかかないため、失礼にあたらないためではなく、チャンスをつかむために存在するもの。まずはそう捉えてみてはいかがでしょうか」

令和皇室の女性に学ぶビジネスファッション

そこでお手本にしたいのが、令和時代の皇室の女性たち。ドレスコードを遵守しながら、美しく公務に取り組まれる姿は、ぜひ参考にしたいスタイルではないだろうか。

「雅子様のドレスの生地をご覧ください。表情ある織りの上質素材をお召しです。キャリア女性もどこかにこのような素材を取り入れて、品格と華やぎを感じさせても。また紀子様がお召しになっている、ドレープが美しいサイドボタンのジャケット。テーラードとは違う変形ジャケットは、たおやかな女性像を演出できます」(大森さん)

「令和の時代に入り、皇后となられた雅子様からは覚悟が感じられ、美しさが増しているようにお見受けします。たとえばお召しの2色の切り替えジャケット。コントラストがあり存在感が出るので、キャリア女性にもおすすめです。また、洗練された着こなしで私たちを楽しませてくれる高円宮久子様。ネックラインに沿う立ち襟デザインは縦ラインを強調する優秀アイテム。シャープに見せたい女性にぜひトライしてほしいですね」(政近さん)

いずれにしろふたりが口をそろえるのは、ビジネスパーソンがドレスコードを意識するときには“分析力”と“想像力”が必要ということ。

「いつ、どこで、どの時間帯に、どんな業界のどんな役職の人が何のために集まる会なのか。徹底的に“分析”すれば、おのずと着るべきものが見えてくるはずです」(大森さん)

「さらに自分の役割を“想像”しましょう。主役を張るのか、引き立てるのか、裏方に回るのか。立ち位置を理解した服装こそが、自分の価値を上げてくれるのです」(政近さん)