3密回避で旅行業界の先頭を走ろう

3月末に出した18カ月計画では、次のような需要予測を出しました。まず緊急事態宣言でお客様の数は大きく減ります。宣言が解除されれば、需要が戻っていきます。その途中で第2波、第3波が来て、また需要が落ちては戻るというアップダウンを繰り返しながら、コロナ前の需要に少しずつ近づいていく。ゴールはワクチンと治療薬ができたとき。そのタイミングを18カ月後と仮定して計画を立てました(図表1)。

18カ月先までの需要予測

この予測に基づいて、まずは3密回避で旅行業界の先頭を走ろうと社員にメッセージを出しました。方向性が示されれば、あとは現場のスタッフが自分たちでアイデアを出して行動します。実際、現場からのアイデアでチェックイン・チェックアウトの方法を変えたり、IoTを活用して大浴場などの混雑度をアプリでお知らせするなど、星野リゾートの各施設では最高水準の新型コロナウイルス対策が行われています。

なぜ現場が自分たちで考えて動いてくれるのか。それは、昔からそのような組織文化を作ってきたからとしか言いようがありません。星野リゾートは、ケン・ブランチャードが90年代に書いたエンパワーメントの論文に従って、教科書通りの経営をしてきました。サービス業でお客様に近いところにいるのは、経営者ではなくスタッフです。現場にエンパワーメントして自分たちで考えながら接客してもらうことが重要であり、イノベーションはそこからしか生まれないと思っています。

なぜいまビュッフェを再開したのか

いまも現場からは次々に新しい取り組みが生まれています。直近では、一時中止していたビュッフェを再開しました。もちろん前と同じではありません。人が触れるものには抗ウイルス抗菌効果のあるナノコーティングをするなど、3密回避と衛生管理を徹底した「新ノーマルビュッフェ」です。これを提案したのは、沖縄の予約センターのスタッフでした。顧客対応する中で、「お客様はビュッフェの中止ではなく、安全対策をしたビュッフェを望んでいる」と感じて提案をあげてきたのです。

最初に聞いたときは驚きましたが、そのスタッフが「ビュッフェを再開したら絶対に予約は伸びる」というので了承してプロジェクト化しました。現時点で私たちは最高水準のコロナ対策をしています。しかし、それで完成したわけではない。今後も現場はさまざまな取り組みをしてくれるはず。18カ月、私たちはつねに進化を続けるつもりです。