「その仕事、本当に会社でなければできませんか?」
また、私が実際に体験したことですが、逆に自分が管理職で、部下がリモートワークへの移行をためらうケースもありました。そういう場合は「なぜ出社して仕事しているのか」という事情を丁寧に聞き取ります。例えば「家にはプリンターがない」という理由なら「会社がなんとかします」と伝えます。そうして「その仕事、本当に会社じゃないとできませんか」と何度も問いかけ、一つひとつの問題を解決していく。このやり方は出社したがる上司にもある程度、有効かもしれません。
テレワークに反対するような人が上司の場合、働き方だけではなく事業自体にもネガティブな影響が出てくることも考えられます。今後、最も難易度が高くなるのは、新規事業を立ち上げるときに、直属の上司が昭和上司というケース。変化の大きいこれからの時代に即した新しい企画を提案しても理解してくれないというパターンです。プロジェクトを潰されそうだと思ったら、いちいち承認を取りに行かないというのもテクニック。最初に「新事業をやります」と大々的にぶちあげるのではなく、まず企画書をつくってその事業領域に明るい誰かに見せる、企画に対するユーザーのアンケートを取るなど、反応をもらって小さな実績を粛々とつくっていき、分かりやすく「ユーザーが支持している」と言えるようになったタイミングで上司に提案するのが得策です。
現在は過渡期ですが、今後、リモートワークがもっと普及し、昭和上司と呼ばれるような人たちも新しい働き方を認めざるをえなくなっていくでしょう。それまでは上司がどうしてそんなことを言うのかを理解して、感情的にではなく、論理的に説得することが大切になってきます。
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埼玉大学教育学部卒業、グロービス経営大学院経営研究科経営専攻修了。サイバーエージェントでインターネットマーケティングのコンサルタントとして、金融・旅行・サービス業のネットマーケティングを支援。その後、デジタル・PR会社のビルコムを共同創業。取締役COOとして、新規事業開発、海外支社マネジメント、営業、人事、オペレーション等、経営全般に10年間携わる。グロービスに参画後は小売・グローバルチームに所属し、コンサルタントとして国内外での研修設計支援を行う。現在は、社内のEdtech推進部門にて『グロービス学び放題』の事業リーダーを務める。グロービス経営大学院や企業研修において思考系、ベンチャー系等のプログラムの講師や、大手企業での新規事業立案を目的にしたコンサルティングセッションを講師としてファシリテーションを行う。