NG声掛け①「○○になったつもりで考えてみよう」

科学の実験をする際に、どうしてこうなるのか? と考えさせる場面があります。この時に、「科学者になったつもりで考えてみましょう」、という指導の仕方もよくあることです。ところが、つい最近、『米国科学アカデミー紀要』という権威ある雑誌に、このような指導の仕方は、子どものやる気をそぎ、科学離れを起こす原因になっているという研究成果が掲載されました。

その理由として、「科学者は特別な能力を持った人」というイメージを子どもたちに与え、自分はそのカテゴリとは異なる人間であるという思いを抱かせることにつながるため、としています。この研究では、科学をやりましょう、と普通に指導した方が、その後の子どもたちの科学に対するやる気を維持することができたと報告しています。

おそらく、科学者に限らず「○○のように」などと言うことで、これができるのは特殊な才能を持っている自分とは異なる人、というイメージを与えることが、子どもの学習意欲をそぐという逆効果を生むことになるのでしょう。

“能力に対する考え方”が学習意欲や成績を上げる

能力は生まれつきだと思っているか? 努力次第で頭は良くなると思っているか? という、能力に対する考え方を明らかにした上で、2年間にわたって、生徒たちの成績や行動を追跡調査した実験がスタンフォード大学で行われました。その結果、能力は生まれつきだと思っている子どもたちは、中学生になってから成績が落ち始め、その後数年に渡り成績が下がっていったのです。一方、努力次第で頭は良くなる、と思っていた人たちは、良い成績が維持されていました。

また、能力は生まれつきだと考えていた子どもたちは、成績が低下すると、自分の能力がないことを理由にしたり、教師の教え方が下手などと責任転嫁をしたりする傾向がありました。それに対し、努力次第と考えていた子どもたちは、学習意欲を高く持ち続け、課題をきちんとこなすことで、成績をキープし続けたのです。

つまり、勉強ができるようになるための大事なことの一つは、能力に対する思考(マインドセット)をどのように形成しているのか、だということがわかります。