NG声掛け②「頭いいね!」

非常に有名な研究ですが、このスタンフォード大学の研究チームは、成績に差がない2つのグループを作成し、片方のグループには、「この成績を取るなんて、頭がいいのね」とその才能を褒め、もう片方のグループには、「この成績を取るなんて、たくさん頑張ったのね」と、学習の過程を褒める、ということを行った後に、難問を彼らに与えるという実験を行いました。その結果、才能を褒められた子どもたちは、難問にはたち向かわず、過程を褒められていた子どもたちは、難問にチャレンジすることが明らかになりました。

さらに、頭の良さを褒めたグループは、その後成績が落ち、再びやさしい問題が出されても成績は回復しませんでした。自分の能力に自信がなくなり、スタート時よりも成績が落ちてしまったのです。

一方、努力を褒めたグループは、難問に挑戦したことで、より能力が伸びることにつながり、その後、ふたたびやさしい問題が出されたときには、より簡単にそれらを解くことができるようになっていました。

とくに子どもが小さいうちは、何かができるようになったことを目の当たりにすると、「なんて賢い子なの!」などと褒めてしまいがちですが、そういった、才能を褒める言葉を日常的に使うことが、実は子どものマインドセット形成やチャレンジ精神、学業成績にまで影響を及ぼし得るものだということを心に留めておく必要がありそうです。

NG声掛け③「ダメ!」

きちんとしつけをしなければ、という思いがあるほど、子どもの逸脱した行動やお行儀の悪い行動を目の当たりにすれば、「○○はしてはいけません」と子どもを注意します。ママたちは時に一日中、「やめなさい! ダメよ!」という言葉を口にしているのではないでしょうか。ところが、この「だめ」という禁止用語には、逆効果が生じることがあります。

心理学では、カリギュラ効果などと言われるのですが、「○○してはいけません」と言われると、人は余計にそれをしてみたくなる心理が生じると言われています。実際、多くの研究から、○○について考えない(やらない)ようにしてください、という指示があると、人はより一層そのことを考えてしまう、という結果が出ています。これは、抑制しなければいけないものについて、常に何を抑制すべきかを心に留めておかなければならず、抑制意図を持つ限り、抑制したい事象を考え続けることになるからだと説明されています。

だめ、と強く言われるからこそやってしまう、ということは子どもだと往々にしてあるのです。危険を伴わないものについては(ゲームやお行儀に関するものなど)、頭ごなしに否定するのではなく、節度を持って少しやらせた上で、なぜダメなのかを説明することが、やめさせることへの近道なのかもしれません。

普段何げなく、その場でつい口に出てしまう言葉が、子どもにとっては大きな影響を持つことを、私たち親はなるべく常に念頭におく必要があるのでしょう。とくに、意図せずに、子どもの意欲をそいだり、自信を喪失させる声がけをしないように気をつけたいものです。

<参考文献>
・Marjorie Rhodes, Amanda Cardarelli, and Sarah-Jane Leslie, (2020). “Asking young children to "do science" instead of "be scientists" increases science engagement in a randomized field experiment”.PNAS May 5, 2020 117(18)9808-9814.
・Mangels, J. A.; Butterfield, B.; Lamb, J.; Good, C.; Dweck, C. (2006). “Why do beliefs about intelligence influence learning success? A social cognitive neuroscience model”. Social Cognitive and Affective Neuroscience. 1 (2): 75–86.
・Dweck, C. S.(1986). “Motivational processes affecting learning”. American Psychologist. 41 (10): 1040–1048.
・木村晴(2004).「望まない思考の抑制と代替思考の効果」教育心理学研究、52、115−126

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細田 千尋(ほそだ・ちひろ)
東北大学 大学院情報科学研究科人間社会情報科学専攻 及び 加齢医学研究所脳科学部門認知行動脳科学研究分野 准教授

東京医科歯科大学大学院医歯学総合博士課程修了。博士(医学)。JSTさきがけ研究員、東京大学大学院総合文化研究科特任研究員などを経て現職。内閣府ムーンショット型研究目標9プロジェクトマネージャー、ウェルビーイング学会理事、Editorial bord member of Frontiers in Computational Neuroscience、仙台市教育局学びの連携推進室学習意欲の科学的研究に関するプロジェクト委員会委員、日本ヒト脳マッピング学会広報委員、国立大学宮城教育大附属小学校運営指導委員などを務める。