コロナウイルスから肺炎にいたるメカニズム

新型コロナやインフルエンザにかかって亡くなったと聞くと、ウイルスが人を攻撃して死にいたらしめたと思いがちですが、実はウイルスはきっかけにすぎないのです。私達は、マウスを使って、このことを証明しました。

前田浩『ウイルスにもガンにも野菜スープの力』(幻冬舎)
前田浩『ウイルスにもガンにも野菜スープの力』(幻冬舎)

実験で明らかになったのは、マウスにインフルエンザウイルスを感染させると、そのマウスは死ぬのですが、マウスの死体からはウイルスが全く見つからないということでした。

なぜなら、ウイルスによって直接マウスが殺されたのではなく、感染後の炎症反応によって、つまり、宿主であるマウスの持つ防御反応の過剰な流れ弾で、自身が傷ついて肺炎を発症していたからです。

これを私達は「ウイルスなきウイルス病」と呼んでいます。1989年、世界で初めてこの事実を突きとめ、科学雑誌『サイエンス』に発表しました。

マウスとインフルエンザの実験で分かったことは、マウスがウイルスに感染後、数日で大量の活性酸素が肺に発生し、肺炎が起こったということです。

発生した活性酸素量は、非感染のマウスの200~600倍もありました。

ウイルスが侵入すると、免疫をつかさどる白血球から、ウイルスを殺すための活性酸素が猛烈に放出され、ウイルスは全滅したのです。

ところが、急激に増えた活性酸素が肺の細胞や組織をも傷つけ、炎症が起こり、発熱や肺炎にいたります。活性酸素はまさに諸刃の剣なのです。

ウイルスは死にいたる病気の引き金ではありますが、直接の病因・死因は増えすぎた活性酸素だったのです。つまりウイルス侵入後でも活性酸素を少なくすることができれば、発症の予防が可能なのです。

以上は実験室の清浄な雑菌のいない環境でのデータですが、現実の生活環境にはあらゆる細菌、病原菌が多く浮遊しています。それらの菌は、インフルエンザウイルス感染で傷ついた上気道の細胞に付着し、容易に血中に入り、複合感染(重感染)し、致命的になるわけです。もうこのときは手遅れになりうる状態です。

ウイルスには抗生物質は効かないといわれていますが、こう考えると、細菌や病原菌に対して効く抗生物質の併用も必要だといえます。

野菜スープの力でお手軽に免疫力をアップしよう!

新型コロナウイルスやインフルエンザウイルスが猛威をふるっているとき、感染しないためには、室内の換気に気を配る、手洗いやうがい、マスク着用などももちろん大切です。

でもさらに活性酸素を除去するために、ファイトケミカルを豊富に含む野菜スープを飲むことも忘れないようにしましょう。

たとえウイルスに感染してしまったとしても、活性酸素を除去する「ファイトケミカル野菜スープ」を習慣的に飲んでいれば、軽症ですむか、早い回復が期待できます。

寒い冬の季節でしたら鍋物や温かいスープは食卓に上りやすく、食事としては理想的です。また、毎朝の味噌汁も、野菜をたっぷり入れて作ると良いでしょう。

写真=iStock.com

前田 浩(まえだ・ひろし)
医学博士

ハーバード大学がん研究所研究員を経て、熊本大学名誉教授、バイオダイナミックス研究所理事長。大阪大学招聘教授、東北大学特別招聘プロフェッサー。副作用のない抗がん剤の研究で、ノーベル化学賞候補となる(2016年)。